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4.甘くて、甘くて、苦いもの(3)

 三が日があけると、さっそくバイトに行き始めた俺。意外にもこんな正月モード全開の時期でも、けっこう忙しかったりする。特に、家族連れが多くて、いつもよりも騒々しい。 「獅子倉くん、レジお願い」  中務さんが、真面目な顔して、俺に指示を出す。関口さんが言ってた通り、年があけてから、ピタッと中務さんのセクハラが止まった。そして、今まで以上に爽やか度が増して……なんか、艶々してる気がする。今までだって、イケメンだったけど、なんだか幸せオーラが溢れてる。すごいわかりやすくて、思わず笑ってしまう。  チリリン  ドアの開く音がしたから、反射的に振り向き、声を出す。 「いらっしゃいませ……!?」 「よう、要!」  ヤスと佐合さんが、恥ずかしそうに並んで立っていた。 「えっ?二人とも、よく来たね。新年早々、デート?」 「あ、うん……ランチタイムだったら、俺達でも入っても大丈夫かなって」  目を合わせて、照れくさそうに笑う二人。なんだか初々しいなぁ、と、思わずにやけてしまう。 「おすすめは、ランチセットの『カットステーキ&ハンバーグ』!ちょっとボリュームがあるんだけど、佐合さんが食べきれなかったら、ヤスに食べてもらうといいよ!」  二人にウィンクして、フロアにいた山瀬さんを呼ぶと、彼らを案内してもらった。俺のほうは、目の端に、窓際に座る二人を入れながら、少し並び始めてしまっていた会計をこなす。  ランチタイムの忙しさに、なかなか二人のところには行けずにいると、山瀬さんが、少し、話して来たら?と、俺の背中を押してくれた。楽しそうに話している二人の邪魔をしてしまいそうだけど。 「……どうだった?」  少しだけびっくりした顔で、俺を見る二人は、似たような表情をしてて、俺のほうが、少しだけ驚く。付き合うと、似てくるものなんだろうか? 「美味かった!ていうか、俺なんか、こういう店にあんま来ないから、ちょっとびびった。いつも親と行くのなんて、ファミレスとかだしさ。」  エヘヘと照れくさそうに笑うヤス。そんなヤスを優しそうに見てる佐合さん。  ……いいなぁ。 「佐合さんは、全部食べられたの?」  テーブルの上は、すでにデザートが出されている状態。男の俺でも、少し持て余す量なんだけど。 「もちろん……ヤスくんに食べてもらった」  クスクスと笑う佐合さんに、ヤスの表情は、崩れっぱなしだ。

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