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5.始まりの季節(11)

 結局、親の説得に、何も返事もせずに、一日が過ぎていく。  これから先のこと、ちゃんと考えたら、うちの親に認められないままなんて、要のためにも、よくないのはわかってる。今のままでいられない。それは、俺も要も、環境がどんどん変わっていくのだから、仕方がない。  このまま時間が止まってしまえばいいのに。  ベッドに横になりながら、うだうだと考え事をしていたら、携帯にメッセージの着信音。  そういえば、朝倉たちはどうなったんだっけ。結局、そんな話もできないままになっていた。身体を起こしながら、背中を壁に預けると携帯の画面を開いた。 「……なんだ、これ」  目の前の画面には、要が朝倉と一宮にキスされてる画像が表示されていた。恥ずかしそうな要はカワイイけど、両サイドは必要ないぞっ!?  送ってきたのは潤。既読がついてすぐに、『モテモテだろ』とのメッセージ。  潤のヤツ、俺が要のことで心配して苛ついているのを見越して、メッセージ送ってきたな。 『とりあえず、始まったのはわかったけど、余計なことするな、って伝えとけ』  彼女たちにその気はなくても、要だって、男だ。悪い気はしないだろう。それに二人ともタイプは異なるけれど、かなり美人な類たぐいに入る。そんな考えが頭をよぎった瞬間、胸に小さな痛みが走る。  もしかしたら、俺が離れている間に、他のだれかに、それも女性に惹かれてしまうんじゃないかって。そんな恐怖が、湧いてくる。 「要……」  携帯を握りしめ、俯いた。  もしかして俺は、本来の要の幸せを、奪ってしまっているのか?  だけど、要の笑顔を思い浮かべると、今すぐにでも要を抱きしめたくなってしまう。要は俺だけのものだと叫びたくなる。  卒業式まで、そうあまり時間はない。  これからのことを、要とちゃんと話をしなくちゃいけない。大きくため息をつきながら、そう思った。

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