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 同性異性関係なく、溜まった欲は性行為によって発散すると治まる。大抵の植物出身者は特定の相手とするか、フェロモンが弱めだと抑制剤の服用で行為をせずとも生活が出来た。円の場合、フェロモンの強さ故に抑制剤は抑え込んでしまうだけのものの為、医者からも連続の服用は推奨されていない。 「いい加減、恋人の一人や二人いても良いんじゃないの? 男でも女でも同種じゃなきゃ良いんでしょ?」 「うーん……」 (自分でも分かってはいる。けど、身体の関係だけに限定して付き合うのって失礼じゃないのか? 割り切ってるならそれはそれで良いだろうけど……)  けれど、出来るならきちんと恋愛がしたい——円はそう思っていた。  そんな事を考えていると、心臓が大きく波打っているのを感じる。じくじくと身体が熱を持ち始めて、円はそれが何なのかすぐに勘付いた。   「……あ、ちょっとごめん。“匂い”、出てきたみたい」 「え、平気?」 「うん。トイレで薬飲んでくる」  そう言って席を立つと、足早にトイレへ向かった。  ———……  個室に入ると、ブレザーのポケットから小粒の錠剤を取り出す。抑制剤の頓服薬で即効性のある、円には欠かせないものだ。  それを一粒、水なしで喉奥に押し込み嚥下する。 「はぁ……」  まだ身体が熱い。  熱の引いていく感覚が分かる程の効き目の薬は、身体に負担がかかる事は理解している。 (やっぱり、そういう相手作った方が良いのかな……)  完全に熱さが引いたところで、個室を出た。すん、と鼻を鳴らしてもいつもの柔軟剤の匂いだ。フェロモンが引いたのを確認し、愛香のところへ向かおうとした時——  何人かすれ違った人の中に、円に気付いて振り返る人物がいた。  すん、と鼻を鳴らした彼は、まるでその匂いの元を辿るかのように円に近付き、彼の手を取った。 「——!?」  突然に手を引かれ、円は驚く。視線を後ろへやると、自身の手を掴む人物と目が合った。        

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