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9 診察と写真と悲しい結婚式3

 でももっと上達したいし、一輝のためにできることをもっと増やしたい。  せっかく病気がいいほうに向かっているのだから、もっとちゃんとした奥さんになりたい……。 「僕、一輝さんの奥さんなんだ……なんか夢みたい」  洗濯物を畳む手を止め、頬を赤くする。  執事に何度も新妻と言われてしまってこそばゆかったのを思い出す。 「ふふ、一輝さんの奥さんなんだ」  来月には挙式もする。母たちが張り切っていろんな演出てんこ盛りの式にしたと言っていたけれど、どんな内容なのかは碧も一輝も当日まで内緒にされている。だから詳細は分からないし、招待客リストすら碧の手元にはない。結婚式なんて参加したことのない碧にはわからないことばかりだ。果たしてどんな演出なのだろう。  やれる家事を終わらせると、碧は一輝が自分のために整えてくれたアトリエに入る。  今は実家の庭を最後に描いた風景画を仕上げているところだ。これが終わったら次はこのマンションの窓から見える景色を描くつもりだ。それと、内緒でカッコイイ一輝の姿絵を今制作している。  人物画はやはり難しくて、どうしても一輝のカッコよさがうまく表現できず、何度も描いては消している状態だ。せめて一輝の写真でもあれば上手く描けるのかな。 「そうだ、写真だ!」  ここは一輝の部屋だ。きっと写真だって何枚かあるだろう。  いつも彼が物を収納している寝室のウォークインクローゼットを開ける。畳んだ衣服を収納するついでに、写真がないかを探してみる。クローゼットに備え付けのタンスの横には段ボールが積まれており、いくつか開けてみる。 「ないなぁ」  ならリビングにあるチェストだろうか。  上から順に開けてみると一番下の収納容量が大きい抽斗に無造作に写真が入っていた。 「あった!」  カッコイイ一輝の写真だけちょっと借りようと写真の束を掴み、一枚一枚確認していく。 「ぁ……」  綺麗な女性や男性と抱き合う今よりも少し若い一輝の写真が何枚も出てくる。しかも裸のままだ。抱き合うだけじゃなく唇にを合わせている写真も出てくる。こんなこと、碧はしてもらっていない。抱き合うのだっていつも着衣のままだし、キスは相変わらず頬だ。 「この人たち……一輝さんの恋人さんたちなのかな」  過去なのだと思う。だってもう自分と結婚しているし、帰ってくるのは遅いが仕事だと言っていた。だからこれは昔だ。わかっていても金づちで頭を打ったような衝撃に動けなかった。  抱き合っている中には、一輝の手がスカートの中に入っているものもある。 (恋人同士って、こんなことするの? だったら夫婦は?)  一緒にいて家事して同じベッドで寝て、それで終わりじゃないのか。 「なにこれ……」  女性の豊満な胸を鷲掴みにしている一輝の手に釘付けになった。

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