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10 マリッジブルーと初めてのキス7
自分のやり方に染まっていく碧が可愛くて愛おしくて、もっと淫らなことを教えてしまいたくなるのをどうにか押さえつけ、今日はこれで終わりと唇を離した。
「また、明日しよう」
「はい……あ、それから」
「それから?」
まだあるのか!
「裸で抱き合っていました。あれはしないんですか?」
さすがにそれは無理だ、絶対にダメ。そんなことをしてしまったらもう自分を制御しきれない。
そればっかりは慣れることができない。むしろ一輝が最大級に興奮して死にかねない。
「ゆっくり、ね。一度に全部するものではないんだよ」
頼む、これで納得してくれ。
「……全部って、他にもあるんですか?」
「あ……いや、それは……」
「夫婦ってどんなことをするんですか、キス以外に」
「まぁ……その……手を繋いだりとか抱き合ったりとか……まぁ色々」
言葉がどんどん濁っていく。しかも、「抱き合う」には様々な意味合いを含ませすぎている。
無知は罪だというが、まさにそれだ。なにも知らないからこそ、碧は知りたがる。なのに、教えることができないのがもどかしい。
あんな写真だけで悶々としてしまう碧が、もっと大人のコミュニケーションを知ってしまったら絶対にしてくれとねだってくるだろう。さすがにそれは無理だ。
「全部、僕にしてくれます?」
「するよ、当然だろう。君は私の可愛い妻なんだから。……でもね、まずは碧くんの身体が大切だからね。せっかく病気がよくなってきているのに、悪化させたら意味がないだろう。もう薬を飲まなくてもいい状態になったら、全部するよ」
元からそのつもりです!
むしろ、どんな行為か知った後に嫌だと言っても完遂するし、それが大好きになるための尽力も惜しまないだろう。
持てるテクニックを総動員して当たらせていただきますと心の中で宣言する。
「本当に?」
「本当だよ、約束する。だから今日はもう寝よう。たくさんの人に会って、碧くんも疲れただろう」
「はい」
やっと碧の表情が明るくなった。ほっとしながらも、早く寝かし付けなければと焦る。
「あの……眠るまでキスしてくれますか?」
それはご褒美であり拷問でもあるとは知らないだろう。だがもう拒めはしない。
「当たり前だろう」
余裕のあるふりをしながら、可愛い妻の願いを叶えていった。碧が眠った後もう一度シャワーを浴びる羽目になるが、それでも今は碧を悲しませないことを最優先した。
キスが解禁になった週末は、碧が心を乱した時間分のスキンシップを求めて来て、ひたすらくっついて過ごしていた。当然、ただ隣にいるだけだが、そこにキスが追加されるだけで一輝も一層碧のことが愛おしくなった。
仔猫のようにぴっとりとくっつき、袖を引っ張ってキスをねだってくる姿にただただ悩殺される。
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