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11 休日と病気と可愛いおねだり6

 その瞬間、碧の身体はホワリとなにかに包まれたような、宙に浮くような不思議な感覚が襲ってきて、身体中から力が抜けていく。 (なに……これ……)  まるで宙を漂っているような錯覚に陥る。すべてから解放されたような、不思議な感覚だ。  すごく気持ちよくて、ずっとこのままでいたい。  だがすぐに自分が一輝の手を汚してしまった事実に思い至り、慌てて体を起こした。 「ごめんなさいっ、一輝さんの手……」  排尿してしまったのかと思ったが、なぜか白っぽい液体がその手の中にある。 「なに、それ……」 「……男の子はね、ここをさっきみたいにされると、こういう白い液体を出すんだ。当たり前のことだよ、驚かなくて大丈夫」  素早くそれをベッド横のチェストの上に置いてあるティッシュで拭き取る。 「ほら見て、もう元に戻っただろう」  言われてそこに目を向ければ、いつもの状態になっている。 「よかった……一輝さんありがとうございます」  いつものルールでその唇にキスをする。 「っ……いや、夫婦だからね。当たり前のことをしただけだよ」 「当たり前なんですか?」  夫婦なら、相手がこうなってしまったら出すお手伝いをするのが当たり前なのか。  そこでふと思い至った。 「なら、一輝さんのは僕がしないといけないんですねっ! 今までしてなくてごめんなさいっ!」 「いや……あの……」 「一輝さんのは大丈夫なんですか?」  慌てて一輝のパジャマのズボンに手をかけ下ろす。 「ぁ……一輝さんのもなってる」  本当に男ならなるものなのか。ちょっと安心しつつ、それに触れた。 「んっ! あ…碧くんいいんだよ私のは」 「でも、夫婦だったら当たり前なんでしょ。一輝さんのは僕がするから……教えて」  多分上手にできないと思うから、教えてもらいながらやってみよう。一輝は片手で碧の物を掴んだが、自分のよりもずっと大きいそれを片手で包むことが出来なくて両手を添える。  さっきしてもらったようにゆっくりと手を上下してみた。 「これで合ってますか?」  上目づかいで訊ねてみる。だが、一輝は眉間にシワを寄せてばかりで返事をしてくれない。  やっぱり下手だったのだろうか。  そこから手を放す。 「下手でごめんなさい……」  なにをやってもやっぱり上手くできない自分が情けなくなる。一輝や兄たちみたいにもっといろんなことを器用にこなせたらいいのにと悲しくなり、また涙が滲んでくる。 「いや、違うんだっ……その……気持ちよくて声が出せなかっただけだ」

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