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12 新婚旅行と芸術と初めての夜6

 美術館内のショップに顔を出し、展覧会のカタログや美術関係の書籍を数点買い求め、ホテルへと戻った。  予約していたホテル内のレストランで、伝統的なオーストリア料理を楽しみ、このホテル名物のザッハトルテをいただいてから部屋へと戻る。  ホテルスタッフに頼んでおいたから、重い美術書は既に部屋に届けられているのを確認し、碧を美味しくいただくための準備を始めた。 「碧くん、疲れただろう。お風呂に入ろう」  本を渡したときに食事が終わるタイミングですぐに入浴できるよう湯を沸かして欲しいと頼んでおいて正解だ。ドイツ語で依頼したから碧には一輝がなにを話しているかわからなかったようだが。 「もう入れるの?」 「そうだよ。おいで」  白と黒の豪奢なバスタブには既に泡がたっぷりと浮かんでいた。 「お姫様のお風呂みたい……」  夢見心地の碧とは正反対に、一輝はそれが美味しい食事の下準備にしか見えなかった。  可愛い妻を唆し、せっかくだから二人一緒に入ろうと提案する。 「使い方がわからないだろう」 「そっか……一輝さんって凄い。なんでも知ってるし、ドイツ語もペラペラで、なんでもできちゃうんですね」  あまり褒めないでくれ。だってこれにはやましい過去の経験と下心が満載なのだから。  もう一輝の前で服を脱ぐことを躊躇わなくなった碧は、着ていた服を脱いでいく。一輝に見せつけるような脱ぎ方ではないのに、煽情的に見えるのは、自分がベタ惚れしているからなのか。どんな仕草すらも誘っているように映る。  これはもう、病気だろう。  いや、むしろ病気でいい。相手が他でもない妻の碧なのだから永遠にこの病にかかっていたい。  もう見慣れてしまっている妻の裸なのに、薄い臀部を視界に捉えただけであそこが元気になってしまう。今まではみっともないと自分を律してきたがそれももう終わりだ。これから存分に碧を堪能できるし、今晩から大活躍だ。  一輝も着衣を脱ぎ捨て碧の後を追いバスタブへと入っていった。  イチャイチャしながら自分と碧の身体を洗い清め、長旅の疲れを癒すためにバスタブで足を延ばす。膝の上に碧を乗せて。 「たくさん歩いただろう、疲れたかい?」 「少し……でも楽しかったです。またあの絵を観ることができるなんて……」  美術館の思い出をうっとりと思い出している碧には申し訳ないが、そろそろ夫婦の営みの時間へと突入させてもらう。 「以前約束しただろう、夫婦ですることを教えると。覚えているかな?」 「覚えてます! 薬飲まなくなったら教えてくれるって」

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