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14 帰国と危険と家族計画2

 碧に発情期が来て色々と頑張ってしまったら、当然子供ができてしまう。それは嬉しいことだし自然の摂理なのだが、まだ二人でいたい。まだまだ可愛い碧を堪能し尽くしていないし、もっと二人だけの時間を過ごしたい。  一輝のワガママだ。  けれど、もう少しだけ……少なくともあと五年は碧と二人だけの生活を続けたいと切望する。さすがに五年も経てば一輝の碧熱も少しは冷めるだろう。  下半身的苦痛で敢えて反らしていたが、そろそろ家族計画を真剣に考える時が来てしまった。  子供の数や時期を碧と話さなければ。同時にバースの話も彼にしなければならない。さて、どう説明をしよう。  その前にアフターピルを一応注文しておこう。  悶々としながら菅原家へ赴き挨拶をし、口うるさい兄たちがいなかったことに安堵しながら(ちょっと色疲れした碧を見せつけたい気持ちはあったが)菅原母に念入りに礼を言い、ついでにアフターピルの相談をした後に天羽家へと向けて車を走らせる。  休日だというのにしっかりと両親が揃って出迎え、父は相変わらず自分の隣に座らせ愛息子のように碧を可愛がっている。いや、むしろ孫を前にした爺の顔かもしれない。 「旅行はどうだったんだ」 「美術館巡りをしました。とてもたくさんの絵があって、ウィーンにいる間ずっと通っていたんですけど、全部見ることができませんでした」 「そうかそうか。だったらルーブル美術館はもっと時間がかかるな。そうだ、一輝は仕事が忙しいから、今度はパパとママと一緒に行こう」 「私と一緒にが一般的だろう、そこは。会社はどうするんだ、社長」 「そこなんだが、いい機会だから隠居しようと思う。会社をよろしく」 「ふざけるな」  すべてを息子に押し付けて楽隠居しようと画策する父に釘を刺す。今隠居されたら碧とのラブラブ新婚生活が過ごせないし、今以上に多忙になり碧との時間が減ってしまうではないか。断固反対! 引きずってでも社長椅子に縛り付けてやる。  まだまだ現役で働いてもらわないと。  そんな天羽親子の押し問答を、碧はニコニコしながら聞いている。そこに悪意が存在するとは全く考えていないようだ。仲のいい親子ぐらいに思っているのだろう。母は相変わらず父が話しているときは口を挟もうとはしない。 「それはそうと、孫はいつ頃の予定だ?」 「まご?」  キョトンと碧が首を傾げる。 「新婚旅行も終わったことだし、次は子作りだろう」  ガハハハと豪快に笑う父を慌てて止める。 「それはっ!」 「男同士で子供はできないよ、パパさん」  碧が不思議そうにぽつりと窘めた。  そう、一般的には。だが、オメガなら話は別だ。自分がオメガだという自覚が全くない碧は、いきなりなにを言い出すんだろうと訝しんでいるだろう。菅原家が徹底的にバース情報をシャットダウンしたおかげで。

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