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14 帰国と危険と家族計画3
それを知らない父も訝しむ。
「碧くんはオメガだろう。オメガなら妊娠できるじゃないか」
「わぁぁぁぁその話はっ!」
「……オメガは男でも妊娠するの?」
その話はこれからするつもりだったのに……。
心の中で叫ぶ。自分が主導となってこの話をしたかったのに、なぜおまえが話す。止めようとする一輝を無視して二人が話し込む。
「バース診断を小学校の頃にしただろう」
「しました。オメガと出たからベータのフリをしろとお母さんに言われました」
でも碧はオメガがどんな性質なのかをしっかりとは理解していないし、今時はイジメに発展するから詳細な説明をしていない。碧の知識はもうそこでストップしてしまっているのだ。
一輝はすべてを父に委ねず、二人の会話に割って入った。
「オメガだとね、男女関係なく妊娠が可能なんだよ。菅原のお義母さんが碧くんにベータのフリをするように言ったのはきっと、碧くんを守るためなんだ」
性的被害に遭いやすいオメガはとにかくオメガであることを隠さなければ生きづらい。面白がって犯す輩が一定数いるからだ。それにうっかり発情してアルファに犯されても、法は守ってくれない。きちんと発情抑制剤を服用しなかったオメガ側に責任があると言われるし、裁判でそういう判例が出たこともある。
自分がオメガだと忘れるくらい必死で守られた碧には実感がないだろうが。
「……そうだったんだ…」
自分が妊娠すると知らなかった碧だが、あまりにも世間知らずすぎてショックを受けるそぶりもない。
「じゃあパパさんとママさんに孫の顔を見せないといけないんですね。……どうやって?」
「それはだな……」
「親父はもう黙っていてくれ!」
「なんだ、いいじゃないか。せっかく久しぶりに碧くんと話せるんだから、お前が黙っていろバカ息子」
「黙っていられるか。これは夫婦の話なんだから勝手にしないでくれ」
一輝と父が本格的にケンカを始めると、母はこっそり碧を手招きし、リビングから連れ出した。
「うるさいからあっちでお茶をしましょう。美味しいケーキを用意したのよ」
「わぁい、ママさんのケーキ僕好きなんです。いつも美味しいから」
「あら、嬉しいわ。ウィーンのお土産見たわよ。私の好きなお菓子を覚えていてくれたのね」
「ママさん前に好きだって言ってたでしょ。一輝さんにお願いして買ってもらいました」
嫁と姑が庭でほのぼのとお茶をし始めたが、男たちはそれに気づかず一時間近くもケンカに励むのだった。
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