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14 帰国と危険と家族計画5
「子供ってどうやったら来てくれるんだろう……」
犬のことよりも……そこから説明が必要だった。
碧は性的なことに無知で、なぜそれをするのかすら理解していないのだ。
ただ夫婦ですることとしか認識してない。しかも気持ちいいからやるんだと思っている節がある。
それもあるのだが、元来は繁殖行為であると告げるのは少し恥ずかしくもある。
だが、これは一輝の使命だ。いっそのこと実践で教えよう。そうだ、それがいい。
そしたら今夜も楽しい新婚ライフが送れるぞ。
「それは家に帰ってから説明するよ。子供の数とか大体のイメージを持とうと思っているんだ」
「そうですね……でもやっぱりイメージできないから一輝さんに任せてもいいですか?」
「それでいいのかい? まあ今すぐ結論を出すことではないね」
これから時間をかけてじっくりとイメージすればいい。
二人の時間は始まったばかりなのだから。
面倒なら増築前提の家を建ててしまえばいいが、これに関しては碧の希望を優先したい。
ゆっくりと食事を楽しみ、気分よく駐車場に向かう頃になると、少し離れた六本木は夜の街にふさわしい賑わいとなっていた。車の混み始める時間が始まり、帰るのに少し時間がかかるなと思いながら、いつものように碧の肩を抱いていると声をかけられた。
「やっぱり一輝だった!」
瞬時に一輝の顔色が変わった。
一番聞きたくない声だ。
「派手な車があると思ったら大当たりだね。……ちょっと、無視しないでよっ!」
「ミヤビ、なんの用だ?」
同じサークルに所属していた女が、なぜよりによって碧との時間に出会ってしまうのだろう。自分の不運を呪い始めた。
これは一度神様に謝罪に伺い、祓ってもらわなければ……。
「ぁ……」
碧が小さな声を上げる。
「なにって、あれ以来会ってないからちょっと挨拶しようと思っただけよ。って、オサナヅマも一緒じゃーん」
一人なのに、キャーキャーと騒がしい。
だがそんなミヤビに碧は丁寧にあいさつをした。
「こんばんは……結婚式の二次会に来てくださってありがとうございます」
可愛く小ぶりな頭が下がる。
「ちょ……やだ…こちらこそお招きありがとうございました」
碧の丁寧さに、ミヤビもつられたように遊びモードを解除する。そしてサークルのノリで結婚式に不躾に碧を煽ろうとした自分を恥じ始めた。
顔を上げた碧を再度まじまじと見るミヤビに嫌なものを感じ、一輝はすぐさま碧の身体を自分に引き寄せる。だがそんなのにめげるようなアルファ女性ではなかった。
「よく見たら、オサナヅマってオメガじゃない」
「あ……天羽碧です、よろしくお願いします」
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