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14 帰国と危険と家族計画6

「ミヤビです、こちらこそよろしく……」  またぺこりと碧が頭を下げる。  そのたびにミヤビは調子を外すようだ。  だがふわりと笑う碧の表情を目の当たりにして彼女の眼の色が変わった。今まで小馬鹿にしていたのに、フラフラと碧へと近づいてくる。 「あらやだ、いい匂い……碧くんっていうの? 随分と可愛いわね」  長い爪が碧の顎をとらえる。それを跳ね除けたいが、手を振り払って碧の可愛い顔に傷をつけてしまいそうだ。だからそっと間に割って入ろうとする。 「邪魔、あっち行って。ねぇ碧くん、お姉さんと遊ばない? なんだったら遊びじゃなくて真剣なお付き合いでもいいんだけど……なんか碧くんとならそれが出来そうな気がするわ」  手入れの行き届いた指が碧の頬を撫でた。 「止めろっ! 私の妻になにを言い出すんだ」 「妻っていったってまだ番にもなってないじゃん。って事はチャンスありでしょ」 「あるわけがないだろう。碧の番は私だ!」 「……ツガイってなんですか?」  ……なぜ一輝のタイミングで物事が進まないのだ。発情期が来たらすぐにでも番になり、事後報告するつもりだったのに……。  卑怯なことを考えるからすべてが後手後手に回ってしまうのだろうか。 「知らないの? アルファが発情したオメガのうなじを噛んだら、オメガはもうその人としかセックスできないのよ。こんな風にね」  ミヤビが碧の身体を引き寄せ噛もうとする身体を乱暴に押し返し、可愛い妻を自分の後ろに隠した。 「あら、残念」 「ふざけるのも大概にしろ、ミヤビ。本気で怒るぞ」 「この子気に入ったから欲しいの。一輝にはもったいないわ」 「相変わらず、すぐに他人のものを欲しがるな。いい加減にしろ。碧は私のだ」  オメガというだけで欲しがるミヤビに碧の良さなどわかるものか。どこまでも純粋で愛らしく、真っ直ぐに愛情を向けてくれ、綺麗な世界を教えてくれる彼の魅力を知りもせず奪おうというのか。  その世界を共に歩みたいと願わず、おもちゃを欲しがりダダをこねるだけのミヤビなどにどうして渡さねばならないのだ。  我慢できず全身に怒気を孕む。 「一輝から奪い取るなんて簡単そうね」  怒りのオーラを向けられ、アルファの攻撃性でもってミヤビは挑発してくる。 「私と闘おうっていうのか?」 「勝ったほうがこの子と番になれるのね。いいわよ、受けて立つわ」  火花を散らす二人に、碧はどうしていいか解らずオロオロするだけだった。  一体なにを話しているのだろう。内容がよくわからないが、兄たちと一輝とのやり取りとは違うのは感じていた。

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