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15 発情と番と幸せと7☆

 歯形の残ったうなじをねっとりと舐め上げられる。 「ぁぁ……」 「これで碧は私だけのものだ……もう誰にも取られない……」 「……番に…なったの?」 「そうだ。碧が発情したから……この日を待っていた」  これが発情なのか。だからあんなにも一輝を欲しがったのか。一輝が狂ったように、言葉少なに腰を打ち付けてきたのも発情のフェロモンに当てられたからかと合点がいく。 「大丈夫だよ、一輝さん……僕は一輝さんのものだから。一輝さんが大好きだから、不安にならないで」 「わかっている。でも気が気じゃなかった。君を他の誰にも取られたくない」  すべての蜜を吐き出した一輝は、欲望を碧の中から抜き取った。そして今度は正面から強く抱きしめる。 「他のアルファが君を奪いに来るんじゃないかと……すぐに連絡をくれてありがとう。やっと碧の全部が私のものになった……」 「最初からずっと一輝さんのものだよ」  だって……。  碧はそっと両腕を一輝の首に絡ませた。 「初めて会った時からずっと、一輝さんのこと好きだったから」  親に言われるがままに見合いをして、そのまま交際してとまるで流されているように映るかもしれない。けれど碧はちゃんと選んでいる。一輝との交際を断るチャンスはいくらでもあった。結婚を断ることだってできた。でも、一輝と離れたくない気持ちのほうが大きくて、ずっと傍にいたい想いが強くて、結婚に至ったのだ。  番のこともちゃんと勉強した。それがなにを意味するのかもわかっている。 「一輝さんの番になれて、嬉しい……」  だから不安にならないで。  これから先も一緒にいて。  ずっとずっと傍にいさせて。  想いのすべてを言葉に乗せて、愛しい人に伝える。それが夫婦にとって大切なことだから。  一輝がそんなにも不安になっているなんて気付かない妻だけど、それでもずっと傍にいたい。 「してから訊くのは卑怯だが……番が私でいいのか?」  一度番になったらもう碧は一輝から離れられない。一輝が抱いてくれなければ狂う身体になってしまった。でもそれでいい。だって、番にならなくてもきっと、一輝に愛されなければ狂ってしまうだろうから。悲しくて悲しくてもう誰とも恋なんてしたくないと思ってしまうだろうから。 「一輝さんがいい……だから離さないで……」  その身体をきつく抱きしめ、キスをする。  一輝の服が乱雑に乗ったベッドの上に二人で横たわりながら、何度も、何度も。 「アフターピルを飲もう……まだ碧と二人だけの時間がいい……」  子供よりも、今は碧だけを慈しみたいと告げられると、嬉しさが募っていく。 「でも……だめ」

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