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 魔族か人間が通りかかってくれないものか。  目覚めた場所だし、ここを拠点にしようかとも考えていたが、移動した方がいいかもしれないな。  ゴーレムはオレなど眼中にないのか、悠々とオレの横を通り過ぎようとしている。  機械仕掛けのゴーレムを犯してやろうという欲求は湧かないが、何となくゼリー状の体を伸ばして捕まえてみた。相手は物理特化なので、攻撃されても今のオレには無効だ。石や砂利を体に含ませてゴーレムの間接に体を流し込む。  グガッ。  鉄などの金属や石で作られた無骨なゴーレムは、関節の動きをピンク色のゼリーに阻まれ、呆気なく鈍い音を立てながら動きを止めた。ふっ、たわい無い。  一応フォローしておくと、物理攻撃が効かないのはゴーレムも同じなので、魔術や怪力がない限り、人間や魔族にとっては中々骨が折れる相手だ。  ただスライムとは相性が悪かったようだな。  ここまで簡単に動きを阻害出来ることを考えると、ゴーレムにとってスライムは天敵かもしれない。  それにしても…………。  ゴーレムは基本的に、建造物の近くに生息する魔物だった。  しかしこの辺りを動物を犯しながら散策した限りでは、ゴーレムが出現するほどの建造物はなかったように思う。  だとしたら少し離れた場所からコイツはやって来たのか?  野生のゴーレムは、出現した場所から離れることはないので、それも腑に落ちかなかった。  残る可能性は魔術師によって人為的に作り出されたものか。  魔術師によって作り出されたゴーレムは、野生のゴーレムが出現した場所を基点に動くように、魔術師を基点として動く。  魔術師が移動すれば、自ずとゴーレムも同調して動いた。  しかし移動距離は魔術師が描いた魔方陣に準ずる。  果たしてこのゴーレムが魔術師製だった場合、魔術師とどれだけの距離を保っているかが問題だ。オレが犯しに行ける距離だったらいいんだが……。  ピンクスライムの体は相手を選ばないといっても、オレとしてはやっぱり魔族か人間を専門にしたい。そっちの方が効率もいいと思うし。ヘビのコスパも捨てたもんじゃないけどな。  すると体の上のヘビが「呼んだ?」と言わんばかりに、顔を上げてオレを覗き込んできた。いや、呼んではいないから、じっとしてろ。  オレの考えが通じたのかは分からないが、ヘビは頭を引っ込めた。ヘビは少しずつ食べたものを消化してるのか、首の辺りにあったコブが小さくなって下っている。  コイツは一体いつまでオレの体の上にいる気なんだ?  上部の視界がヘビで遮られているのを感じつつ、暇つぶしにちょっかいを出したゴーレムを見る。  動きを止めたのはいいものの、後のことを考えていなかった。  別に恨みはないし解放してやるか、そう思い手を引こうとしたとき――。 「おい、どうした?」  人間きたぁあああああああ!!!!!!!

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