再度、森で彼を発見したときは不覚にも嬉しかった。 　……もしかしたら彼女なのかもしれないが、ピンクスライムの性別は分からん。便宜上『彼』で問題ないだろう。 　ピンクスライムといえば、乱獲のため希少種となっている魔物だ。 　それが人の頭ほどの大きさもあるものが、未だ存在していたとは。 　何故か彼の上でヘビがとぐろを巻いているのには笑いが漏れた。 　話に聞いていた、ピンクスライムが他の生物から好かれるというのは真実だったらしい。生物側も彼らが命を奪わないと本能で分かっているからだろう。 　この森には魔物は生息していないはずだが、どこから出現したのか……。 　ダメ元で、スライム壺を彼の進行上へ置いた。 　果たしてこのまま彼は、他のスライム同様に中へ入ってくれるだろうか。 　昨日ゴーレムを連れ帰って一つ気になった点があった。 　魔方陣が書き換えられていたのだ。 　まさかピンクスライムにそんなことが出来るとは自分でも信じられないが、痕跡があった事実は変えられない。 　大きさから見ても異能種である可能性は高いが、私は俄然、彼に興味が湧いた。 　不思議と彼を知ることが出来るのならば、体を差し出してもいいと思うほどに。こんなおじさんの精気でよければ、くれてやろう。 　間違っても最中は人に見せられるものではないが、相手はピンクスライムだ。 　それに…………。 　昔の光景が頭を過ぎる。 　美しく彩られているのは、過去の幻影だからか。 　魔王と共に彼も葬られたと聞いたとき、忘れようと心に決めたというのに。 　胸にはまだ彼の肖像画がある。 　バカバカしい話だ。犯された相手に恋心を抱くなど。 　けれど私は忘れられない。 　彼の繊細な指先が、優しく肌をなぞった感触を。悶える私に見せた微笑みを。緊張する私の身と心を、彼は会話と手管で丁寧に解きほぐしてくれた。 　それは後光を背負ったような、この世のものとは思えない麗しさだったのだ。 　後ろで感じる快楽と共に、私の心は大きく打ち震えていた。 　今では悲哀を伴うこの恋情を、このピンクスライムは束の間忘れさせてくれる。 　ゼリー状の体が見せる色合いが、今は亡きスズイロ卿の、瞳の色が変わる瞬間と同じように思えるのは……流石に気の迷いか。 　案の定、地面を這うピンクスライムが、スライム壺に入ることはなかった。 　跳びつく彼を反射的に剥がそうと藻掻く。 「くっ……この……ぁ」 　しかし体は、これから訪れるであろう快楽に総毛立っていた。 「んっく……ぅぅ……っ」 　鼓動が早くなり、額に汗が浮かぶ。 　私の秘部に唯一触れたのは、あの美しい魔族だけだったというのに。 　ゾワゾワと後孔を犯される背徳感に、私は喘ぐことで記憶に蓋をした。