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 ヘビにゼリー状の体を貫通されて目が覚める。……他に起こし方はなかったのか。  まぁ起こしてくれたんだからいいかとベッドを見ると、まだレイは眠っていた。  ……何で起こされたの? オレ。  てっきりレイが目を覚ましたらから、オレも起こされたんだと思ったんだが。  違うのか? ヘビは玄関の方を向いて動かない。  誰か来たのだろうかと、寝室からリビングへ移動したときだった。  来訪者は鍵を持っていたのか、抵抗なく玄関のドアを開け放つ。 「失礼……――魔物っ!?」  現れた赤毛の青年は、太陽の光を背に身を屈め、腰に携えた剣を一閃させた。  細身の割に鍛えているのか、青年の素早い動きによってオレの体は上下真っ二つに寸断される。  青年はレイとは違い、身なりが良かった。抜かれた刀剣も、高名な鍛冶士のものだろう。曇り一つない刃には、周囲の景色が映り込んでいる。  跳ね上がった上半分の体からその景色を眺めながら、オレは下半分の体を青年へと伸ばした。 「ちっ、スライムか!」  そう、オレ、ピンクスライム!  なので物理攻撃は無効だ。跳ねた上半分が重力に従い落下し、赤毛の青年へ伸ばした下半分の体と合体する。 「一旦外に……っ!?」  青年は家の中で魔法は使えないと悟り、外で迎え撃とうとするが、とき既に遅し。  オレの体は青年に取りついていた。  こうなってしまえば、いくら剣術に覚えがあっても宝の持ち腐れだ。  しかし青年は尚も抗おうと、外に向かって転げ出る。地面に転がることで、自分の体からオレを剥がそうとしているのだろう。  あっという間に身なりのよかった青年の服が土で汚れるが、オレの知ったことではない。 「っ……この……! 離れっ、むぐっ!?」  ちょっと君、うるさいから黙って。  まだレイも寝てるのに、とゼリー状の体で口を塞ぐ。だが青年はスライムに襲われたときの対処法を心得ているのか、口を塞がれても動じずにオレを飲み込んだ。……うん、普通のスライムだったら、自分の体が食われたことに驚いて身を剥がすんだけどな。  異能種でもあるオレは普通とは違う。そして催淫効果を持つピンクスライムだ。 「な、に……何だこれ……っ……体が、熱い……っ」  媚薬を作るときですら、ピンクスライムの体を水で薄めるっつーのに、原液で飲むからだよ。

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