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 シドのいる魔族領までの道のりは長かったが、オレの働きによって行程は順調に進んでいた。今は道中の森で、テントを張って一息ついているところだ。  しかし我ながら見事な働きぶりだった。  ときには、山中で襲いかかってきた盗賊を、アッサムが攻撃を弾いた隙を突いてイカせたり。 「あひんっ! こんなのはじめてぇぇん!!!」  ときには、オレを盗もうとした村人をイカせたり。 「のぉぉおっ、おら、おらぁぁ! いぐぅぅううう!」  いやぁ、犯す人材には困らなかったぜ。  しかしこれほど貢献しているオレを、アッサムはたき火越しに辟易とした表情で見てくる。 「レイ様、こいつ出発時より大きくなってませんか……?」 「あぁ、彼は異能種なのもあって、分裂しないようだな」 「どれだけ精気吸ったら満足するんだよ……」  町に着けば、ちゃんと用意された小瓶に体を分けてやってるというのに、何という言い草だろうか。  旅費に困らず、旅を続けられているのは誰のおかげだ?  何だ? 最近じっくり構ってやれてなかったから、妬いてるのか? 「やめろ! にじり寄って来るな!」 「ははっ、すっかり仲がよくなったな」 「これのどこがですか!? だから、来るなって! お前、俺がイヤがってるの、分かるだろう!?」  分かってるよ、イヤよイヤよも好きの内、だろ?  ゼリー状の体を伸ばしてアッサムに触れる。 「うわっ! ばかっ、場所を考えろ……!」  それは場所を替えればいいってことか。アッサムも随分素直になったもんだ。  しかしシドの魔族領に近づき、魔族や魔物がいつ現れても不思議ではない状況なので、これ以上の接触は素直に控える。 「…………本当にこういうところは聞き分けいいよな、お前」  いいところで邪魔が入るのはイヤだからな!  そんなことよりオレはアッサムに聞きたいことがあった。  じっとアッサムの腕を見つめる。 「な、何だよ……」  あれは盗賊と相対したときだった。  剣戟の最中、アッサムは確かに身を守るために硬化の魔法を使って、盗賊の攻撃に耐えたのだ。  オレは是が非でもその魔法が知りたい!  だって自分の体を硬化出来たら、もうヘビとか刀剣の柄に頼らなくて済むんだ! 上手く想像通りに固められるかは試してみないと分からないけど! いいや、そこは死ぬ気で作り上げてみせるから!  しかしどうやって硬化魔法のことを伝えればいいものか……。  オレは試しにゼリー状の体を伸ばして剣の形を作った。角が丸くなってしまうのはご愛敬だ。どうしてもゼリー状だと、形を固定するのが難しい。 「何か私たちに伝えようとしているのか? こんな風に形を作るのは、はじめてだな」  すぐに意図を察してくれる、レイ大好き。 「ろくでもないことのように思えますが……」  それに反してアッサムはどうか。まだまだ調教が足りてないようだな。

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