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 ギリギリ剣の形に見える体をアッサムの腕に向ける。  咄嗟にアッサムは腕を遠ざけるが、オレは腕に弾かれたように反対側へ体を動かした。  腕に剣を向けては、弾かれる動作を何度も繰り返す。  その意味に気付いてくれたのは、やはりレイだった。 「アッサムの腕に、剣が弾かれているのを表現したいのか?」  そうそう。  試しにレイが自分の腕を前に差し出してくるが、オレは体を左右に揺らして違うと告げる。 「やはりアッサムの腕に意味があるようだな」 「ですが……俺の腕が何だって言うんです? 盾がなければ剣を弾くことなんて出来ませんよ」  そうなんだけど! そうなんだけど……!  例え硬化魔法を自分にかけたところで、剣筋を防げるわけではない。実際に体で剣を弾けるのは、ゴーレムや硬い鱗を持つドラゴンぐらいだ。  それでも弾くことが出来なかった攻撃を、アッサムの言う通り盾を使えば弾けるようになる。オレが伝えたいのはそこ……!  助けて、レイ!  どうにか意図を汲んでもらえないかと頼みの綱であるレイに視線を集中させる。レイは顎に手を置いて考え込んでいる様子だった。 「ふむ、攻撃を弾く動きか…………もしかして、硬化魔法か?」  レイ愛してるぅぅううううう!!!!!  頷くように縦に大きく体を揺らすと、レイも当たるとは思っていなかったらしく破顔した。 「ははは、どうやら当たりらしい」 「硬化魔法ですか?」  相変わらずアッサムはピンと来ていないようだ。  どうでもいいから、今すぐオレに硬化魔法を教えろ。 「前に話したことがあっただろう? 私のゴーレムの魔方陣が改変されていたことを」 「はい……ですが本当に、このピンクスライムがやったんですか? 失礼ですが、レイ様の思い違いでは?」 「いや、ピンクスライムが家に来たとき、わざとゴーレムの横を通ったがピクリとも動かんかった。信じられない話だが、確かにコヤツに書き換えられたんだ。……もしかしたら戦いに備えて、硬化魔法を覚えたいのかもしれん」 「攻撃用にということですか? そんな……お前……」  感激したように輝く瞳を、アッサムが向けてくる。  いや、オレはゼリー状の体を固めて肉棒を作りたいだけだ。

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