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「はるばる来てもらったからには、礼儀を尽くさねばならぬだろう? アナタ方にこそ見て頂かねばなるまい。魔族の神秘を、『魔』が生み出した、究極の美を!」  軽くシドが右手を上げたのに合わせて、室内に二つあるドアの内、彼が入室した方のドアが開く。  そこからゆっくりと姿を現したのは――。 「まさか……生き……」  前世の、オレだった。  死体修復後も手入れをされているのか、腰まで伸びた銀髪は歩調に合わせてサラサラと揺れいてる。着ている服も見覚えがなく、生前より華美になっている気がしないでもない。  しかしその目からは、当然の如く生気が全く感じられなかった。  レイも思わず浮かしかけた腰を下ろす。心なしか両肩も下がっているように見えた。続く落胆の声音からも、気持ちが沈んでいるのが窺える。 「そんなはずはないか……」  けれどシドは気落ちしているレイのことなど気にせず、姿を現した生前のオレの姿を惚れ惚れと見上げ、得意げに語った。 「どうだ、素晴らしいだろう? 死してなお、これだけの美しさを誇るのは、世界中を探しても父上以外に存在しない!」  お前は本当、根っからのファザコンだな……! 聞いてるオレの方が恥ずかしいだろ!?  こらっ、アッサムも見蕩れてるんじゃない! これ死体だからな!? 「…………さて、用が済んだからには、お引き取り願いたいところだが、そういうわけにもいかぬ」  え? シドくん、もしかしてお父さんを見せて自慢するためだけに、二人を招いたの?  一人落ち込んでいたレイは、そこでようやく顔を上げた。 「私たちをどうするつもりだ」 「安心しろ、すぐには殺さぬ。……連れて行け」  人間側への人質にするのか、シドの命令を聞いたケンタウロスの執事が、レイとアッサムに立つよう促す。それとは別にメイドがやって来て、オレの前に大きなトレイを置いた。 「そうだ、礼を言い忘れていた。土産は有り難く受け取らせてもらおう」  特にオレの存在に対して触れられないと思ったら、手土産だと思われてたのか。  いや、それは……とレイが口を開くが、オレは横にゼリー状の体を振って、自ら置かれたトレイの上へ移動した。  ちょっとシドと話し合わないといけないことがあるからな。問題はどうやって話すかだけど。  オレの動きを見て察したのか、レイもそれ以上は言葉を発しなかった。何故だかアッサムは涙ぐんでいる。 「聞き分けのいいピンクスライムだな? ヘビが上に乗ってる意味は分からんが……キミはワタシが運ぼう」  言葉通りに、トレイの上に乗ったオレをシドが持ち上げる。  そろそろ大型犬ほどの大きさになってるオレを持てるとは、細身の割にシドにも力がついていたんだな。  レイに向かって堂々と言葉を発していた姿もそうだが、息子の成長ぶりに感心する。あの泣き虫だった子がよくぞここまで…………。

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