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第14話

 ノエルはキースの首に腕を回した。  引き寄せて、口づける。 「ん、ん…」  ぬるぬると舌を絡め合うと、体の芯が熱くなってきて、ノエルの頭の中がとろりと溶け始めた。  何度もキースと交わった体はキスだけでも簡単に欲を孕むようになっている。  キースは唇を徐々に下に移動させた。  顎や喉にちゅちゅと軽いキスを落としながら、一度首筋を強く吸い上げ、鎖骨をつうっと舌で辿る。 「あ…んっ」  キースは既にぷくりと立ち上がっていたノエルの胸の粒を乳輪ごと舐めた。そのまま口に含み、甘噛みを繰り返す。 「あ、あんっ…は、あぁ、ん…っ」  もう片方も指で抓まれ、こりこりと捏ね回されたノエルは、それだけでどんどん性感が高まって声が抑えられなくなった。  キースは桜色の胸の果実をねっとりと舐り、強く吸いついたかと思うと、執拗に舌先でくりくりと刺激する。  もう一方はかりかりと爪先で掻かれ、むず痒いような感覚にノエルは身を捩った。 「ふ…ぅ、あ、んん、はぁ、あっ…」  ノエルの中心が少しずつ力を持ち、先端に先走りの丸い雫が滲み出る。 「気持ちイイか?」 「うんっ、気持ちイイ…っ」  ノエルの反応に目を細めたキースは、更に舌を這わせた。  腹を舐め、時に強く吸いながら、辿り着いた内腿にキスの雨を降らせる。  それから、足の付け根の際どい場所をゆっくりと撫でさすった。 「あぁ…んっ」  どこもかしこも敏感なノエルの体は、強く刺激するよりも柔らかく優しく触れた方が性感が高まるのだ。  キースは枕元に置いておいたノエルを手に取った。  中身を出して、指にまとわせる。  ノエルに膝を立てさせ、秘められた蕾にそっと触れた。 「あっ、ふぅ…ん…ん」  周囲をやんわりと揉み込んでから、指を挿入した。内側の感触を確かめるように何度か出し挿れしてから、すぐに二本目も埋め込む。  数え切れないほど何度もキースを受け入れた場所は、あっという間に柔らかくなっていく。 「あぁ…はっ、ふぅ、ん、あ…ん」  キースはロノエルの顔を見た。  とろんと潤んだ瞳は悦楽に濡れて、半開きのぽってりとした唇からは熱い吐息と、途切れ途切れに甘い声が零れ落ちていた。  淫靡で煽情的な表情に、キースの雄にも力が漲ってゆく。  ――もっと溺れろ。  キースは緩く勃ち上がったノエルの裏筋をぺろりと舐めた。 「ひぁっ…!」  ノエルは咄嗟にキースの頭を掴んだ。 「やだやだっ、だめ…!」  口淫など、自分がしたことはあってもキースから受けたことはない。頭の中が軽いパニックを起こす。  キースはそれに構わず、亀頭をゆるゆると舐めしゃぶった。 「あんっ、あ、あっ、やぁっ、だめ…あぁ!」  雁首に沿って舌を這わせ、時折、鈴口を舌先でぐりぐりと押し込む。  ノエルの手がキースの髪をかき乱した。  キースはノエルの抵抗を抑えるように、中に挿れた指で泣き所を押し上げた。 「ひあぁっ!」  ノエルの体が大きく跳ねた。  キースはその瞬間を逃さず、肉茎を深くまで咥え込んだ。唾液をまぶすように舌を動かしながら上下に扱く。 「あぁっ! はぁ、んっ、やぁ…!」  同時に指を抜き挿しし、後孔を広げてゆく。  ノエルは堪らず、シーツを強く握りしめた。  次第にじゅるじゅると卑猥な音がし始めて、ノエルの顔が羞恥で真っ赤に染まる。 「ふぁ、あ、んっ! いや、あっ、あぁ! んんっ」  キースの口の中でノエルの雄が硬さを増す。  キースは一度、口を離し、ノエルの表情を窺った。  情欲に塗れた琥珀が涙を滲ませて、困惑したようにこちらを見ている。  キースは視線を外すことなく、見せつけるように竿に舌を這わせた。 「ふぁ…んん、いや…あぁ…」  先走りが止めどなく流れる中、裏筋をちろちろと舐めながら、空いた手で袋を優しく揉みしだく。 「あぁっ、だめ、それ…!」  ノエルが悲痛な声を上げた。  感じやすい体には過ぎた快感だった。  キースは再び肉茎を咥え、それを喉奥まで迎え入れた。唇を窄ませて締めつけ、ゆっくりと上下に動かす。 「ああ…はぁ、んっ、ふぁ…あっ、あぁんっ」  ノエルの亀頭は大きく膨れ上がり、袋がぱんと張って、限界が近いことを示していた。  キースは指を増やして後孔への抜き挿しを続けながら、ストロークを速める。  前と後ろを同時に嬲られ、ノエルは髪を振り乱して悶えた。 「あっ、だめ! だめ! はなして…っ!」  懇願を無視して、キースは口淫を続ける。  ノエルの体はびくびくと不規則に震えていた。 「だめっ、もう…でる…! でちゃうぅ…!」  その言葉で、キースは先端をじゅうっと強く吸い上げた。 「ああぁぁーー…っ!!」  ノエルの足先がぴんと伸びて、先端から生温かい粘液が放出されると、キースはそれを迷うことなく飲み下した。  最後の一滴まで逃すまいと、鈴口をちゅるっと吸い込む。 「やだ…ぁ、なんでぇ…」  ノエルはほとんど泣いていた。  絶頂の波が引いていく間も、荒い呼吸と小刻みな痙攣が止まらない。  快感と羞恥と困惑と、全てが綯交(ないま)ぜになって、脳が思考を停止している。  キースは一度、後孔から指を抜いて、ノエルを抱きしめた。 「気持ちよくなかったか?」  耳元で静かに問う。 「う、ふぅ…っ」 「教えてくれ、ノエル」  ノエルの心臓がどくんと高鳴った。  ――名前…! 「ノエル、良くなかったか?」  再びの問いに、ノエルはぶんぶんと首を横に振った。  体を離したキースが、真上からノエルを見つめる。欲情とは別の熱を孕んだ赤い双眸が、真っ直ぐにノエルを射た。  いつもと様子の違うキースに、ノエルの心臓が早鐘を打ち始める。 「…なら、お前の感じてるとこ、もっと見せてくれ」  ノエルは魔法にでもかけられたように、こくりと小さく頷いた。  キースはコンドームを取って、自身の昂りに被せると、ノエルの横に仰向けになった。 「上に乗れ」  キースが何をさせようとしているか気づいたノエルは、躊躇いつつもキースの太腿に跨がった。 「自分で挿れるんだ」  言われたノエルは膝立ちになり、キースの昂りの上に移動した。  片手でキースの肉茎を固定し、もう片手で双丘の間を広げる。  硬く屹立したキースの先端を蕾にあてがうと、ノエルは少しずつ腰を落とした。 「んん…っ」  ぐぐっと、キースのものが入ってくる。  最も嵩高な部分を迎え入れる時が苦しくて、ノエルの口から呻き声が洩れる。 「うぅ…ん…」  だが、そこを通り過ぎてしまえば、あとは慣れたものだ。  すっかりとキースの形を覚え込んだ後孔は、まるで誘い込むかのように、ずぷりとキースの屹立を飲み込んだ。 「ああ…っ」  太く硬い楔がどくどくと熱く脈打っている。  はあ、とノエルは甘い吐息を零した。  一杯に広げられた場所は苦しいけれど、それ以上にキースの昂りを感じられるのが嬉しい。  キースを見ると、口元が薄く笑みを刷いていた。赤い瞳に獰猛な色が浮かぶ。  くらり、と目眩がするようだ。  自分の中で気持ちよくなってほしいと、ノエルは自ら腰を動かした。 「ふっ、あん、はぁ、あっ、あぁ」  ずずっと引き抜いて自重で押し込む。腰を浮かせてはまた落とすという行為を、ノエルは喘ぎながら繰り返した。 「はっ、すげぇ…絶景だな」  キースに揶揄うように言われ、それがまたノエルの快感を煽る。  更に内壁を抉るように擦りつけると、甘い痺れが走り抜けた。 「あぁんっ!」  思わず首が仰け反る。 「イイところに当たったか?」 「んっ」 「ノエル、ちゃんと自分もよくしろ」  キースに名前を呼ばれると、それがどんな言葉でも逆らえない気がした。  言われるまま、ノエルは雁が前立腺に当たるように何度も上下に腰を振る。 「あっあっ、あんっ、はぁ、いいっ!」 「…ああ、俺もいいぞ」 「んっ、ああっ、あん、あっ、はぁ…っ!」  キースの怒張が更に膨れ上がり、ぎちぎちとノエルの内壁を圧迫する。  ノエルの雄は再び勃ち上がり、鈴口からたらたらと透明な雫を垂れ流しながらノエルの律動に合わせて淫らに揺れていた。 「あっ、もう、もうっ…!」  目の中にちかちかと星が飛び、余りの愉悦に体が勝手に跳ね回る。  思うように体を動かせなくなったノエルを見て、キースはにやりと笑った。 「そんなんじゃ、俺はイケないぜ?」 「あっ、でもっ、もうむりぃ…!」 「なら仕方ねぇな」  そんな風には全く思っていない口ぶりで、キースはノエルを下から突き上げた。 「ああっ! だめぇっ!」  ノエルは切ない悲鳴を上げた。  背中がしなって後ろに倒れそうになるのを、キースが咄嗟に膝を立てて受け止める。  ノエルの腕を掴んで引き留め、その手を自分の太腿に引っ掛けた。 「しっかり掴まってろよ」  キースはノエルの腰を支えて、容赦なく下から揺さぶった。  キースの動きに合わせてノエルの体も弾む。 「あんっあっ、あっあぁっ、んっあんっ!」  あられもない声を上げながら、ノエルは必死にキースに掴まって、その責め苦に耐えた。  気持ちよくて気持ちよくて、頭が真っ白になる。  体の奥から悦楽の炎が燃え上がり、ノエルの全身を包み込んでいた。  キースの太腿に、ノエルの指が白く食い込む。 「あっ、もうだめっ、だめっ!」 「もちょっと頑張れ」 「むりっ、ああっあんっ、も、イく…!」  下腹から迫り上がってくる感覚に、ノエルはぶるるっと体を震わせた。 「んんぅーーーっ!!」  ノエルは堪えきれず、激しく痙攣しながら白濁を撒き散らした。絶頂の大波に攫われて息が詰まるのに、キースの動きが止まらない。 「やだっ、とまって…!」 「悪ぃ、無理だ」  キースの楔も解放の時を迎えようとしていた。より速く、より深く、何度もノエルの最奥まで突き立てる。  額に浮いた汗がキースの長い前髪を乱した。 「ああっいやっ、あぁんっ」 「ふっ…」  キースの顔が苦しげに歪む。  キースはひときわ奥深くまで貫き、ゴム越しに熱情を吐き出した。            体を起こしたキースはノエルの体を抱きかかえて、自身の雄を抜き取った。 「あぁ…ふぅ…んっ」  ゴムを外して、口を縛って投げ捨てる。  キースはノエルをぎゅっと抱きしめて、ベッドへと倒れ込んだ。  涙に濡れた眦に唇を落とす。  ノエルはまだ快楽の波に揺蕩ったまま、呆然と視線を彷徨わせていた。  小さく甘い吐息を零しながら、時折、ぴくぴくと体を震わせる。  そんな妖艶さを纏うノエルの姿に、キースの雄はぐっと力を取り戻し始めた。  だが、無理をさせたい訳ではない。  キースは労るようにノエルの頭を撫でた。  額や頬に張りついた藍色の髪の毛を払い、優しい手つきで梳き流す。  ノエルの瞳がようやくキースを捉えた。 「……キース」 「ああ」 「キース…キース…」  舌足らずな声で、ただ名前を呼ぶ。  愛おしくて、愛おしくて、堪らずキースはノエルに口づけた。  ノエルも懸命にそれに応える。 「……好き」  呼吸の合間に、ぽろりと零れ落ちた言葉。  ノエルハッと我に返ったが、キースの顔は穏やかな笑みを湛えていた。  その瞬間、ノエルの中に閉じ込められていた感情が、堰を切って溢れ出した。 「好き…、好き…」 「……ああ」 「好きだ…、好きなんだ…」  琥珀の瞳から澄んだ涙が流れ落ちる。  キースの胸は苦しいくらいに引き絞られた。  ノエルの想いに、同じ言葉を返せたらどんなにいいか。  けれど、キースにはもうそれができなかった。  マフィアのボスとなった自分に、軽はずみな言動は許されない。どんな小さな隙も見せてはいけない。  それがファミリーのため、自分のため、何よりもノエルのために必要なのだ。  キースはノエルの涙を吸い取り、その唇にキスをした。  優しく慈しむだけの、ただ愛を伝えるための口づけ。  そしてそれは、しっかりとノエルに伝わった。 「……好き」  言われるたびに、キースは口づけを返す。  それを何十回と繰り返して、二人はきつく抱き合った。 「…な、もっかい、したい」  ノエルがおずおずとキースの顔を窺う。  キースは楽しげに目を細めた。            キースは体を起こして胡座を組み、ノエルを後ろから抱き込んだ。  その小さな後頭部に軽く唇を落とし、キースはノエルの耳にふーっと息を吹き込んだ。 「ひゃっ」  ノエルはぞわりと肌が粟立つ感覚に身を縮めた。  キースがくくっとくぐもった笑い声を上げる。 「お前、俺の声、好きだろ」  下腹に響くようなバリトンに耳元で囁かれ、ノエルはびくっと体を揺らした。  確かにそうだ。キースのどこか感情を抑えたような、静かな声が好きだ。  でも、今は違う。  そこには明らかにノエルを揶揄って楽しむような響きがある。  こんな言い方、普通だったら腹が立つだけなのに。  どうして相手がキースだというだけで、こんなに胸がざわつく? 「んっ」  キースがノエルの耳をかぷりと食んだ。  耳の上部から輪郭に沿って、唇で挟んでやわやわと刺激していく。  唇が耳たぶに辿り着くと、そこをくすぐるように弄ばれた。  それから下から上へ、つつーっと舌先だけの軽い愛撫。  だが、それがノエルには堪らない。 「あぁ…はぁ、んっ、ふぅ…」  耳のふちだけを何度もなぞる舌に性感を煽られる。 「ホント、感じやすいよな」 「んんっ」 「耳だけでもイケんじゃねぇ?」  キースはそう言うと、上部にある軟骨をかりっと噛んだ。 「やあっ」  ノエルの体がぴくんと跳ねた。  キースはまたノエルの耳を舐める。  耳の外側から内側へ。入り組んだ軟骨部分をごく軽いタッチで舌で撫でていく。  時折ちゅっちゅっと音を立てて吸いつき、徐々に強めに舐っていくと、ノエルが体を震わせ始めた。 「気持ちいいか?」  ノエルは首を振って否定するが、髪が綺麗に切り揃えられた項は赤く染まっている。 「意地っ張り。でも、嫌いじゃねぇよ」  キースはくすりと笑って、今度はノエルの耳の裏に舌を這わせた。  耳の付け根をぺろりと舐める。 「ひぁんっ」  愉悦を含んだ声が思わず洩れた。  耳を舐められたことはあるけれど、耳の裏がこんなに感じるなんて知らなかった。  気を良くしたキースは更に耳裏を責めた。 「あぁっ、はぁ…ふぅ…んっ、あん…っ」  ノエルの口から絶え間なく甘い声が零れ落ちる。  その中心はまた兆してきていた。  このまま耳穴を犯してもいいが、キースはもっと焦らしたくなってしまった。  キースは耳裏から唇を離し、今度は首筋に息を吹きかけた。 「やぁ…っ」  急に場所を変えられ、ノエルの体が小さく跳ねる。 「首も弱いもんな」  キースはノエルの項をキスで埋め尽くした。  襟足の、髪で隠れるかどうかのところを強く吸い上げる。 「んぅ…っ」  ノエルの体がふるりと揺れた。  必死に快感に耐えようとする姿がいじらしい。  キースの雄もまた硬さを取り戻してくる。 「ふ…っ、お前だって…」  ノエルはここぞとばかりに、キースの雄を上からぐりっと押し込んだ。 「くっ…」 「ふふっ」  今まではキースに嫌われたくなくて大人しくしていたが、本来は勝ち気な性格だ。やられっぱなしでは気が済まない。  双丘の谷間にあるキースの分身を、腰を揺らして刺激する。 「てめっ、いい度胸だな」 「お前ばっか、ずるいだろ」 「後悔しても知らねぇぞ」  挑発されたキースは、ノエルの背骨の上をつつっとなぞった。 「ふぁ…っ」  ここが弱いことは知っている。  むしろ、ノエルに触れて感じない場所があるなら教えてほしいくらいの感度の良さだ。  この体を他にも抱いた男がいるかと思うと殺意すら湧いてくる。  背中全体をさわさわと撫でていると、ノエルの体がひくひくと波打った。  だが、ノエルも負けじとキースの雄を、谷間の柔肉できゅうっと締めつけ、ゆさゆさと前後に揺らす。  直接的な刺激はやはり強い。  キースの中心が力を増して、ぐっと角度を上げてきた。  だが、それはノエルにとって想定外の事態をもたらした。  キースが膨張したものを、ノエルの双丘の奥に突き入れてきたのだ。 「やぁんっ!」  キースの雄が会陰と袋の裏をずりっと擦り上げて、ノエルは嬌声を上げた。  キースは確信を持って、それを繰り返した。  同時に耳穴に舌を入れて、ぴちゃぴちゃと音を立てて出し入れする。 「やあっあんっ、んぁっはぁ、やぁっ」  ノエルは挿入されてもいないのに、されているような感覚に陥った。  激しく尻の谷間を責められ、耳穴を嬲られ、ノエルの雄が硬く勃ち上がる。先走りがぽたぽたと落ちていた。 「ああっそれ、だめっ、いやぁ…はぁんっ!」 「嘘つけ、気持ちイイだろ」 「だめぇ…だって、イっちゃうぅ…」 「いいぜ、イけよ」  キースは腰の動きを速め、ノエルの雄に手を伸ばした。 「ああぁぁっ!」  軽く握り、先端をくりっと捏ねただけで、ノエルの体はぐっと仰け反った。  そのままくりくりと捏ね回したあと、竿を少し強めに扱いてやる。 「やああーー…っ!!」  腹の奥から込み上げてくる熱に抗えず、ノエルはその精を解き放った。  びくん、びくんと体を震わせ、ぐったりと前のめりになる。  キースはそれを腕を回して支え、ちゅっと首筋にキスを落とした。 「…だから言ったろうが」  笑みを含んだ声は、だが、ノエルには届いていなかった。  キースがコンドームを取ろうと手を伸ばす。  すると、ノエルの手がそれを阻んだ。 「…それ、やだ…」  振り返ってキースを見るノエルの瞳に強い懇願の色が浮かぶ。  ほんの数秒の逡巡の後、キースは手を引いた。ノエルが嬉しそうに微笑む。 「な、前からがいい…顔、見たい」 「…てめぇはどこまで煽れば気が済むんだよ」  キースは顔を顰めて、ノエルの体をひっくり返してベッドに押し倒した。  既に一度、受け入れた場所はもうぐずぐずに蕩けている。  それでも、キースはノエルの中を傷つけないように、自身の肉茎にもローションを垂らし、全体に塗りつけた。  ノエルの足をキースの腕に掛け、互いの手を握り、指を絡め合わせる。 「…挿れるぞ」 「うんっ、きてっ…」  キースはゴムをつけることなく、自身の昂りをノエルの蕾にあてがった。  前に乞われた時は、それを拒否した。  けれど、本当はずっとこうしたかった。  生身の自分で、ノエルと繋がりたかった。  ぐぷ、と先端を埋め込む。 「ああっ…」  琥珀の瞳が喜悦に濡れていた。  キースはゆっくりとノエルの中に押し入った。  内側の細かい襞ひとつひとつがわかるほど、みっちりと包み込まれる。  そのまま最奥まで突き入れた。 「あ、あぁ…っん」 「ふぅ…っ」  互いに得も言われぬ充足感に満たされる。  キースは緩やかに抽挿を始めた。  ノエルの内壁は熱く柔らかいのに、キースを離すまいときつく絡みついてくる。  腰を引くと、引き留めようとするかのように締めつけてきて堪らない。  ぎりぎりまで引き抜いて、奥まで挿し入れるのをゆったりとしたペースで続けた。  互いの想いを確かめ合うように、呼吸を合わせて。  どちらの瞳にも愛しさが溢れていた。  やがて、キースの怒張が更なる欲を募らせ質量を増していく。  気づいたノエルはうっとりと囁いた。 「…もっと、うごいて」 「お前はホントに…」  快楽に身を委ねきったノエルはどこまでも欲望に忠実になるらしい。  とんでもない相手に魅入られたかもしれないと思いながら、それならそれで愉しむだけだとキースは開き直った。 「泣いても知らねぇからな」  そう宣告し、キースは腰の動きを強めた。  速いストロークで、深くまで穿つ。 「あんっああっ、はぁ、んん、あっあっ…」  ノエルは陶然とした表情で、甘く濡れた喘ぎ声を上げた。  それがキースの官能を更に煽る。  キースは容赦なくノエルを揺さぶった。  同時にノエルの体を折り畳むようにしてのしかかり、胸を弄る。  両胸の乳輪の周りを指で囲み、突起に向かってくっくっと揉んだ。ノエルは直接的でない刺激にまで感じて身を捩る。 「あぁんっ、やぁっ、あっはぁ、ふぁ…んん」  ノエルの声がますます艶を帯び、体がしなった。  その中心もきつく張り詰めて、透明な雫が流れ落ちる。 「やあぁっ!」  キースが中を抉るように突き入れると、ひときわ高い悲鳴が上がった。  キースの雄も解放を求め始めている。  沸き上がる熱を堪えながら、ノエルの中のしこりを擦るように激しく責め立てた。 「あんっあっ、ああっんぁっ、やあっあんっ」  ノエルの嬌声に掻き立てられるように、キースの抽挿がより速く、深くなる。 「ああっ、だめっ、もう…!もう…!」 「ああ、俺も…」 「あぁっ、なかに、だして…っ!」  ノエルが薄くなった精を吐き出すのとほぼ同時に、キースもノエルの中で欲情を迸らせた。  どくどくと濃くて熱いものがノエルの中に注ぎ込まれ、腹の奥まで満たしていく。 「あぁ…すごいぃ…」  ノエルは肩で息をしながら、恍惚とした表情で悦びに打ち震えた。  男なのだから孕むことなどあり得ないのに、その手は自然と腹を撫でてしまう。 「キースの…あつい…きもち、い…」  ノエルの痴態に、ぐしゃりとキースの理性が崩れ落ちた。  ノエルの中に入ったままの肉茎がぐっと漲っていく。 「あ…っ、もうむり…っ」 「煽ったのはてめぇだ。最後まで付き合え」 「あぁ…だめぇ…」  キースは完全に力を取り戻した昂りを、再びノエルの中へと抜き挿しした。  箍の外れたキースは、ノエルの反応に構わず最奥まで容赦なく突き入れる。  ノエルの両足を肩に掛け、その細腰をぐっと掴んで荒々しく肉棒を捩じ込むと、雁で前立腺を削るように擦り上げた。  ぐちゅぐちゅと中に出した粘液が淫猥な音を立てる。 「ああっんっ、あんっああぁ、いやぁ…!」  雁を少しだけ膨らんだところへ引っ掛けるように何度も擦ると、ノエルの体がびくびくと震え始めた。 「ああ…だめぇ、これ、やだ…っ」 「嘘だろ。ナカ、めちゃくちゃ締まってるぞ」  そのまま抽挿を続けていると、いよいよノエルの体が小刻みに痙攣してきた。  だが、ノエルの中心は力を失ったままで、透明な体液だけがとろとろと溢れ出している。  すると、ノエルの内襞が突然、まるでバイブレーションのように震え始めた。 「ああぁっなにっ、これ、いやぁ…!」  今まで感じたことのない奇妙な感覚。中が激しく収縮し、途轍もない快楽がノエルの体を溺れさせる。 「ナカだけで感じてんだな」 「だめぇっ、ああぁぁっ、とめてぇっ…!」 「こんだけ善がってりゃ説得力ねぇだろ」 「ああっ、くるっ、なんか、きちゃう…っ!」  キースがにやりと笑って、ぐんと強く突き刺した。ノエルの体が一瞬だけ宙に浮く。 「ああぁぁっ!! ああぁぁっん!!」  狂おしげな声を上げながら、ノエルは体をびくんびくんと跳ねさせた。 「中でイったか? すげぇうねってる」  薄い笑みを浮かべたキースは、内襞の蠕動を感じながら抽挿を続ける。 「ああんっああぁぁーー!! やだぁー…っ!」  ノエルの嬌声が止まらない。  四肢が強張ったまま、びくびくと痙攣も続き、ノエルは苦しげに頭を振った。 「とまってっ! おねがいっ! とめてぇ…!!」 「…まだイってるのか?」 「やあぁ…イくのとまんな…っ! ああぁぁ!」  ノエルの瞳からぼろぼろと大粒の涙が零れ落ちた。  だが、キースも自らの欲を解放するまでは止まれない。  がつがつと腰を打ちつけ、最後の頂を目指す。 「ああんっこわい…っ、おかしくなるぅ…!」 「いいぜっ、なっちまえ!」 「ああーーっ!! ああっん! ひあぁぁ…!」 「ほらっ、出すぞ! 全部飲み込めよっ」 「ああぁぁーーーーっ!!!」  キースはぶるりとひとつ身震いし、滾る熱を放出した。  ノエルの体は無意識に中を蠢かせ、キースの精を一滴残らず搾り出す。 「あぁん、あん、はぁっ…ああ…んっあぁ」 「…ふっ、すげぇな」  キースは呟くと、ずるりとノエルの中から抜け出した。  それから、未だ痙攣の治まらない体を刺激しすぎないように、やんわりと抱き込む。 「あ、あ、…はぁ、んっ…」  ノエルはキースに縋りついた。  泣きながら焦点の合わない視線を漂わせて、途切れ途切れに甘い声を零す。  キースはその藍色の髪を優しく撫でて、わななく唇にキスをした。なだめるように額や頬にキスを繰り返す。  キースの温もりを感じながら、ノエルはようやく目を閉じた。      

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