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第31話

 抱きしめ合って口づけ合うと、互いの中の情欲が高まった。  二人はキスを続けながら、ベッドルームへ向かう。  だが、ノエルはそこで一度、足を止めた。  二年間、自分は誰ともセックスしなかった。  けれど、不意にキースはそうじゃないだろうという思いが湧き上がったのだ。  キースはマフィアのボスで、実業家で、時には何かの理由で肉体的な繋がりを必要としたかもしれない。  このベッドで自分以外の誰かを抱いたかもしれないと思うと足が進まなかった。  キースはそんなノエルの気持ちを見透かすように言った。 「…ここには誰も入れてねぇ」  ここには、ということはノエルの推測は外れていないということだろう。  嫉妬しないと言えば嘘になるが、それでも、キースがこの部屋で過ごした二人の時間を大切に思ってくれていたとわかっただけで今は充分だ。  だが、二人でベッドへ縺れ込むと、今度はキースが動きを止めた。 「…どうした?」 「あー、ずっとここ使ってなかったからな。ローションもゴムもねぇ」 「…それなら大丈夫だ」  ノエルはサイドチェストの引き出しを開けた。  取り出したのは前に使っていたローションのチューブだった。ノエルが新しく買っておいたのだ。 「用意がいいな」 「するってわかってんだから、当然だろ」 「…ゴムは?」 「…ゴムはいらない」 「お前なぁ」  キースは溜息をついた。  生身で繋がりたいという気持ちはわかるが、最初から最後までそれではノエルの体に負担がかかりすぎるし、衛生上もよろしくない。 「先にシャワー浴びてくる」 「え、いいよ」 「よくねぇ。少し待ってろ」  キースはベッドを降りて、バスルームに入った。  キースがシャワーを浴びて出てくると、ベッドルームのスクリーンが全て下ろされ、ノエルが裸でベッドの上に座っていた。  向けられた背中の緩やかな曲線と、滑らかな象牙の肌の質感がキースの欲を煽る。  後ろから抱き込むと、ほんのりとバニラの香りがした。  振り返ったノエルの琥珀の瞳が熱を帯びて煌めく。  キースはノエルの少しひんやりした肌に自分の熱いほどの体温が染み込んでいくのを感じながら、ゆっくりとその靭やかな体を押し倒した。  ノエルのふっくりとして弾力のある唇の感触を味わいながら、何度も角度を変えて口づける。  下唇を食むようにやわやわと刺激し、舌で唇を丁寧になぞるとノエルの体がふるっと震えた。  ノエルが自分から口を開いて舌を差し出す。  キースはそれを唇で優しく包み込むと、しっとりと吸い上げ、それから舌と舌を触れ合わせた。  舌先だけをそっと動かし、互いの柔らかな感触を確かめると、それでだけで体の芯が熱くなる。 「ん…もっと…」  ノエルにねだられ、キースは深く唇を合わせた。  開いた合わせ目に舌を挿し入れ、焦らすようにゆったりと歯茎をなぞる。  上顎を舐め回して舌を吸うと、ノエルの体がまたひくっと揺れた。 「ん…んぅ…」  ノエルはもう我慢できないとばかりに、自分からキースの舌を絡め取った。  互いに舌と舌を絡め合い、吸って、甘く噛んで、また絡め合う。 「んっ、んっ…」  ノエルの鼻から快感の滲んだ息が洩れ、飲み切れなかった唾液が口の端からつうっと流れる。  キースはそれをぺろりと舐めて、ノエルの表情を窺った。  その瞳は快楽に潤み、唇は唾液で濡れててらてらと輝いている。  互いにキスだけで高まった体は、中心がぐっと力を増していた。 「あ、もぉ…後ろ、ほしぃ…」  物欲しげな目で見つめられ、キースは僅かに眉を顰めた。無意識に煽ってくるから、質が悪い。 「…んな、焦んな」  キースはローションのキャップを外して、手の平に中身を押し出した。  とろとろの液体を指にまとわせると、ノエルが両膝を立てて足を開く。  後ろに手を伸ばし、そっと蕾に触れた。 「あ…ん」  入口の周りをくにくにと揉み込むと、その感触にキースはふっと手を止めた。 「……柔らかいな」  ノエルはぎくっと体を強張らせた。 「誰ともしてないぞ…!」 「へえ、じゃあ何でこんなに柔らかいんだ?」  キースがにやりと笑う。  ノエルは顔を真っ赤にして、口を尖らせた。  気づいているのに聞いてくるなんて意地が悪い。 「んなの、言わなくてもわかるだろ…!」 「言わなきゃ続きはしねぇ」 「っ…!」  ああ、もう最悪だ。  ノエルはわなわなと唇を震わせたあと、手で顔を覆った。  キースはしないと言ったらしないのだ。  自分が折れるしかないとわかっていても、悔しいものは悔しい。 「…自分でしてたんだよ! 言わせんな!」  キースはくすりと笑って、再び指を動かし始めた。 「俺のこと考えてたのか?」 「他に誰がいんだよ…っ」  あの夜、お預けをくらってからノエルの体は信じられないほど疼いていた。  キースにこれ以上ないというほど快楽を覚え込まされた体は、一度、その記憶を思い出すと自分でも止められなくて。  夜毎、自分で自分を慰めていたのだ。  けれど、自分の指では足りなかった。  今日だって、キースに触ってほしくて、敢えて自分で慣らすことはしなかった。 「も…最低だ…」 「そう言うなよ。俺は気分いいぜ?」  ふてくされるノエルに、キースが嬉々として言う。  蕾の周りを丹念に揉み解してから、キースは指を一本、挿入した。 「あん…っ」  ノエルが自分でしていたお陰で、中にはまだ余裕がある。 「んんっ…」  二本目の指を挿れ、ローションを塗り込むように内壁を優しくさすった。  それから、円を描くように動かす。  丹念に入口を広げてから、三本目を挿れた。 「はあ…」  ノエルの口から熱い息が零れた。  ノエルよりも太いキースの指が内側を押し広げて少し苦しい。なのに気持ちよくて。  懐かしさと嬉しさが込み上げる。  キースは指を抜き挿ししながら中を探った。ノエルのいいところは全て覚えている。  指を曲げ、この辺だろうと当たりをつけて擦ると、微かな膨らみに触れた。 「ああんっ」  ノエルの体がびくんと跳ねる。  キースは楽しげに目を細めて、指の出し入れを続けた。 「あん、あっあっ、いや…はぁん、あぁ…!」  くちゅくちゅと音を立てながら中を広げ、ノエルの性感を煽る。 「あ…だめ…、あんっああっ、んっ、ふぅ…」  甘い嬌声が零れ落ち、キースの官能も高まっていく。  後孔をじっくりと解したキースは、ノエルの前立腺だけを集中的に責め始めた。 「ああっだめっ…!」  とんとん、と軽くノックするとノエルの背中がぐんとしなった。そのまま、とんとん、とリズミカルに刺激する。 「ああっあんっ、いやっ、そこ、だめっ…!」 「駄目じゃねぇだろ。気持ちいいよな」 「やぁっ、ああっあんっ、あぁんっ、あぁっ!」  ノエルの中心は硬く勃ち上がっていた。  先端からたらたらと先走りが流れ落ちる。 「もうこんなにして、感度良すぎだろ」  キースが空いた手で、ノエルの亀頭をくりっと捏ねた。 「ああっだめっ、いっしょはだめ…っ!」 「気持ちよすぎるか?」 「あぁんっあっ、あんっはっ、やぁんっ」  そのまま前立腺をとんとん叩きながら、くりくりと亀頭を捏ね回す。 「ああっいやっ!」  ノエルがキースの手を掴んだ。 「やだぁ、イっちゃう…!」 「イケよ」 「だめ…っ! キースのがいい…っ」  ノエルの瞳が悦楽に塗れて、キースを見つめる。 「お前のでイきたい…」 「…ホントにお前は…」  キースは溜息をつきつつ、ノエルの足を抱え上げた。  キースの雄も硬く反り返り、先走りで濡れそぼっている。  それをノエルの蕾にあてがうと、キースはぐぐっと先端を埋め込み、そのまま躊躇うことなく最奥まで貫いた。  ノエルの全身に電流が走る。 「ああああっ…!」  どぷっと、ノエルの雄から白濁が飛んだ。 「ああ……うそ……」 「挿れただけでイくとか」 「やだぁ……はずかし……」  ノエルが羞恥で顔を覆う。 「それだけ感じたってことだろ」  キースはノエルの手をどけて、ちゅっとキスを落とした。 「もっと気持ちよくなろうな」 「んんっ」  キースは少しの間、自身の雄が馴染むまで待つと、腰をぎりぎりまで引いて、入口付近で動かした。 「浅いとこも好きだろ?」  煽るように言って、前立腺に当たるか当たらないかの所で出し入れする。 「あんっ、ああ…やぁん、はぁっあっ…!」  じゅぷじゅぷと卑猥な音が耳を犯す。  もどかしい感覚に身悶え、ノエルは無意識に蕾を閉じて、キースの雄を締めつけた。 「…んなに締めんな」 「だって、ぬけそう…」 「抜きやしねぇよ。こっからだろ」  キースは後孔を慣らすように少しずつ前に進みながら、前立腺を擦りつつ最奥を目指した。  だが、それがノエルには物足りない。  もっと激しく犯してほしい。もっともっとキースで一杯になりたい。 「も、いいから…もっと奥までついてぇ…」  欲情に濡れた声で懇願する。  キースの理性はぷつりと途切れた。  久しぶりだから優しくしたいと思っていたのに、ノエルはあっさりとそれを越えてくる。  キースはノエルの腰を掴んで、目一杯、奥まで突き入れた。どちゅっと音がして、最奥に当たる。 「ああぁぁーーっ!!」  ノエルの体がびくんと跳ねた。  そのまま、キースは打って代わって激しくノエルを揺さぶった。 「ああっあっ、あんっはぁっ、んん、あぁっ」  一番奥を何度も突かれ、ノエルの頭が白く霞み始めた。  キースの太い楔がぎちぎちと突き破りそうなほどの力で内壁を割り開こうとする。その圧迫感でさえ今のノエルには快感だった。  ――ひとつに繋がっている。  それが嬉しくて気持ちよくて堪らない。 「あんっ、いいっ! きもちいい…!」 「ああ、俺も…」  キースもノエルの内壁の熱と狭隘に信じられないくらいの愉悦を感じていた。  誰と体を交わしても、ここまで気持ちいいと思ったことはなかった。  それは単に体の相性とか、テクニックなどの問題ではない。  心と体が一致しているからだ。  ノエルを愛しているから、ノエルと繋がることに歓びを感じて、それが体を昂らせるのだ。 「ああっいいっ、すごいっ…あんっいいっ」  ノエルの口から零れる淫らな嬌声が、キースの動きを一層、激しくする。 「はぁっあんっ、きもちいいっ、あぁんっ」  ばちっばちっと肉をぶつからせて、怒張した楔を最奥へと繰り返し打ちつける。 「あっもうっ…もうっ…!」  ノエルの体がぴくぴくと跳ねた。いつの間にかそそり立った雄が先走りを垂れ流している。  キースはその根元をぎゅっと握った。 「ああっやだっ」 「もすこし待て」 「やあっイきたいっ…」  ノエルが嫌嫌と首を振るが、キースは構わず自身の雄を速く、深く突き入れる。  最奥に当たるたびにノエルの脳裏に火花が散った。バチバチと快感がスパークして、頭の中が真っ白になる。 「ああっおねがいっ、手はなしてぇ…!」 「…まだだ」 「あぁんっはぁっやんっ、むりっイくっ」  ノエルの瞳から涙が溢れた。  身を焦がすような悦楽が下腹から全身に回って、今にも爆発しそうだ。イきたい、早く出したい、それだけに支配される。 「あんっあぁんっ、いやっもうっ、だめぇっ」  ノエルの内襞が蠢いて、ぎゅうっとキースを締めつけた。早く早くと促すようだ。  キースがぱっと手を離した。 「ああああーー…っ!!」  ノエルの体が大きく仰け反った。  先端から勢いよく白濁が飛び散って、ぱたぱたとノエルの腹や胸に落ちる。  キースはひときわ深くまで貫くと、ずるっと一気に引き抜いた。  そして、ノエルに向けてびゅるるっと大量の精を迸らせた。それがノエルが放ったものの上から更に白く汚す。  ノエルは咎めるような目を向けた。 「やあぁ…なんでぇ…」 「バカ、全部ナカに出したら、あとで痛い目に合うのはお前だぞ」 「いいのに…」 「良くねぇ」  キースはサイドチェストの上からティッシュペーパーを取って、ノエルの汚れをさっと拭き取った。  それからノエルにちゅっとキスして、再びローションを手に取った。  中身を出して、それを指先に伸ばす。  キースはローション塗れの指で、ノエルの胸に触れた。 「あっ…」 「こっちも可愛がってやらねぇとな」  楽しげな目で、キースはノエルの程よく筋肉のついた胸を揉んだ。  汗ばんできた肌の滑りがよくなるように、ローションを塗り広げる。  全体をやわやわと刺激するとノエルの体がぴくっと反応した。 「ああ…はぁ、ふぅ…っ」  キースが手の動きを変えた。  ノエルの胸の外側から中心に向かって、柔らかく撫でていく。 「あ、あ…はぁ…」  キースが指の先の腹で、くるくると胸を撫でた。その絶妙な力加減が気持ちよさと焦れったさを感じさせて。 「ん…ふ…あ、あ…」  指が少しずつ中心に近づいていくと、ノエルの心臓は期待で高鳴った。 「あんっ」  キースの指が乳輪に触れた。  そのまま乳輪の縁だけをくるくるとなぞる。  それだけでノエルの桜色の乳首がふくっと膨らんできた。ぷるっと体が震える。  だが、キースの指はそれ以上は進んでこない。相変わらず、くるくると乳輪の縁を撫でるだけだ。 「…いじわる…っ」  ノエルが睨んでも、キースは楽しげに笑っている。焦らして焦らして、それから責めるのがいいのだ。  くるくる、くるくる。  それだけでもノエルの性感はどんどん高まった。もともと感じやすい体だ。ローションのぬるぬるした感触が余計にそれを煽って、途切れ途切れに甘い声が零れる。 「あ、あ…ん…ふっ、あっ…」 「気持ちいいな?」 「んんっ」  首を振って否定するが、桜色の乳首はもうぷっくりと立ち上がっていた。 「嘘はダメだろ」  キースは人差し指の先で、ごく軽く乳首を弾いた。 「あぁんっ」  ノエルの体がびくっと弾んだ。 「嘘つきにはお仕置きが必要だな」  キースはにやりと口の端を上げて、続けてぴんぴんっと乳首を弾く。 「あんっあんっ、やんっ、それだめっ」 「ダメなのか? こんなに立ってるのに?」  ぴんぴんと弾くたびにノエルの体がびくびく震えて、乳首がもっと固くしこっていく。 「あっあっやぁん、だめっ! よすぎるからっ」 「やっぱり気持ちいいんじゃねぇか」 「んんっ、いいっ、きもちいいから…っ」 「から?」 「…もっと、やさしく…」  ノエルが潤んだ瞳で見つめる。 「優しく、な」  キースは弾くのを止めて、人差し指と中指で乳首を挟み、側面だけを柔らかく擦った。 「ああっ…」  両方の乳首をすりすりと優しく撫でる。  すりすり撫でながら、時折、くにっと小さく抓む。  すりすり、くにくに、すりすり、くにくに。 「あんっあっ、んっ、はぁっあぁっ…!」  乳首への刺激が、どんどん下腹に伝わっていく。ノエルの中心はまた兆してきていた。  キースは撫でていた指を変え、今度は親指と人差し指で乳首を挟んだ。こりこりと捏ねて、きゅっと力を入れて抓み上げる。 「ああっ」  こりこり、きゅっ、こりこり、きゅっ。  両方を一度に責められて、ノエルはもうただ喘ぐことしかできなかった。胸の芯から甘い痺れが全身に広がって、快楽の海に漂うだけだ。 「ああっあんっ、いい…っ、はあっああっ」  ノエルの蕩けた表情を見ながら、キースは得も言われぬ充足感を味わっていた。  愛する人を自分の手で快楽に染めていくのが楽しくて堪らない。  キースは人差し指の付け根を乳首の先端に当てた。そのまま、ゆっくりと指の腹で撫でる。 「ひぁっ」  ぬるるっと、ローションのぬめりで表面だけを滑っていく。  指を押しつけず、置いただけの状態でそうされると、くすぐったいような快感が走った。  指先が乳首に辿り着くと、また根元までゆっくりと撫でる。 「ああ…は、あ…あ…はぁ…んっ」  指の腹が何度も行ったり来たりすると、ぞわぞわと背筋がざわついた。  乳首の先だけを緩く刺激されて、気持ちいいのに焦れったい。  ノエルはこの焦れったさに弱いのだ。  ぬるぬると指を往復させていると、琥珀の瞳が物言いたげにキースを見上げてくる。  本当はもっと焦らしたいところだが、今日はあまりいじめない方がいいだろう。  キースはノエルの乳首の小さな窪みに爪を立てた。それをくりくりっと小刻みに動かす。 「あぁんっ…!!」  乳首の先端から、じんっと甘い電流が胸の奥の方まで走り抜けて広がった。  そのまま両方の窪みをつつくように刺激し続けると、ノエルは堪らず身悶えた。 「ああっあんっ、あぁんっだめっ、やぁんっ」  両方の胸がじんじんと疼く。  その疼きが下腹にどんどん溜まって、ノエルの雄はもう痛いくらいに張り詰めていた。  と、キースが突然、ノエルの乳首をぎゅうっと抓んで、きつく引っ張った。 「ああぁっ、だめぇっ…!!」  ぴゅくっと、ノエルの先端から少しだけ白い粘液が溢れた。 「あ…え…なんで…?」 「軽くイったか」  キースが目を細める。  抜群に感度のいいノエルなら乳首だけでも絶頂できるだろうと思っていたが、予想通りだ。  キースは困惑するノエルに構わず、ぱくっと右の赤く熟れた乳首を乳輪ごと食んだ。 「ひぁんっ」  ちゅうちゅうとしつこく吸ってから、口の中でぺろぺろと舐めた。舐めては吸って、吸っては舐める。 「あぁんっだめっ、ああっはあっ、いやっ…」  甘い喘ぎ声が止められない。  キースの舌が熱くてぬるぬるして、それだけで気持ちいいのに、優しく刺激されて腰がもじもじと動いてしまう。  空いた左側の乳首も弄られ始めると、ノエルはもう何もわからなくなってしまった。  片方は吸われ、舐められ、もう片方は柔らかく上下左右に押し倒される。 「ああっはあっ、あぁんっやぁっ、だめぇ…」  絶頂寸前のぞくぞくとした感覚が下腹部で積み重なっていって、今にも噴き出しそうだ。 「ああっ…!」  ぴゅるっ、ぴゅるっ。  また、ノエルの先端から白濁が勢いなく洩れた。 「やだぁ…なんでぇ…?」  ノエルが泣きそうになっていると、キースが唇を離して、ノエルの頬に口づけた。 「乳首で少しイっただけだ。かわいいな」  よしよしと頭を撫でてやり、キスをしながら、また乳首に触れる。 「やだぁ…も、ちくびばっか…やだ…」 「でも、気持ちいいだろ?」 「や…へんになる…」 「大丈夫だ。もう少しだけ、な」 「うう…」  キースに宥めるように言われると、ノエルは拒みきれない。  キースが今度は左側の乳首に吸いついた。 「あぁんっ」  乳輪を舌でなぞってから、乳首の先の表面だけをぺろぺろと舐める。舐めてから、くりくりと刺激し、また舐める。 「あっあっ、だめっ…」  空いた右側はまた優しくすりすりと擦って、左側とタイミングを合わせてくりくりと捏ねた。 「ああっはあっ、んあっやぁん…!」  両方を責められて、ノエルの腰がゆらゆらと淫らに揺れ動く。 「あっもうっ、やだっ…ああっあっあっ…!」  ノエルの反応を見たキースは、両方の乳首をぐっと押し込み、そのままぐりぐりと捏ね回した。  触られていない前立腺がぶるるっと震えた気がして。 「ああぁぁ…っ!!」  ノエルは体を仰け反らせて、屹立した雄から精を撒き散らした。とうとう乳首だけで完全にイってしまったのだ。  くたっとノエルの体から力が抜ける。  赤くぷっくりと膨らみ、つんと立ち上がった乳首が唾液でぬらぬらと光って壮絶にいやらしい。  キースは肩で息をしながらぐったりするノエルの額や頬に口づけて、またよしよしと頭を撫でた。 「乳首だけでイけたな。いい子だ」 「うう…も、やだ…」 「かわいい。めちゃくちゃかわいい」 「う…ふぅ…っ」  半泣きになっているのを宥めるように、キースはノエルを横向きにして抱きしめて、ゆったりと背中を撫でた。 「いい子だな。かわいい」  低く優しい声で繰り返し囁いて、ノエルの羞恥心を遠ざける。  大人の男がかわいいと言われて嬉しいかとも思うが、ノエルはセックスの最中は甘えたがりになる。だから、これは有効だ。  少しずつ落ち着いてきたノエルは、恨めしげにじろっとキースを睨みつけた。  キースはやりすぎたかと思ったが、ノエルがかわいすぎるのがいけない。 「そんな睨むな」 「…キースの変態」 「おいおい、そりゃねぇだろ」 「お前のせいで変な扉が開いちまった…」 「俺としては大歓迎だがな」 「しばらく乳首は禁止だ!」 「マジか…」  ショックを受けたという風のキースを見て、ノエルはくすっと笑った。本当は大したダメージなどないと知っている。キースがその気になれば、快楽に弱い自分など好き勝手にできるのだから。 「…俺ばっかイかされるのは不公平だ」  ノエルはキースの下腹に手を伸ばした。  キースの肉茎がしっとりと濡れて頭をもたげている。  ノエルはその鈴口をぐりっと押し込んだ。 「あ、こら」 「人があんあん喘いでるの見て興奮してんだろ?」 「恋人が感じてんの見て興奮しない奴は不能だろうが」 「じゃあ、もっと興奮させてやる」  ノエルはキースの体を仰向けにして、その足元に移動した。  半勃ちになったキースの雄をぱくりと口に含むと、上目遣いでキースを見ながら、口の中でれろれろと亀頭を舐める。 「ふっ…」  キースの口から熱い吐息が零れ、ノエルはにまりと笑った。  そのまま舐めながら、親指と人差し指で輪を作って竿を扱く。ぐっとキースの雄が角度を上げてきた。  一旦、口を離したノエルは両手でやんわりと袋を揉み込んだ。中の玉をくにくにと刺激しながら、裏筋に舌を這わせる。  上から下へ、下から上へ。つうっと舐めたあと、また亀頭を口に入れた。  鈴口を舌先でくりくりとつつき、溢れてくる先走りを舌で舐め取る。  徐々に亀頭が大きくなってきているのを感じながら、ノエルは手で袋への刺激を続けつつ、亀頭全体を舐め回し、ちゅうちゅうと鈴口に吸いついた。 「うっ…ふっ…」  最も敏感な部分を責められ、さすがのキースも為す術がない。ノエルの藍色の髪に指を通し、歯を食いしばって快感に耐える。  キースの表情にノエルも性感を煽られていく。  キースの腹の奥から、どんどん熱が迫り上がってきた。  竿が太さと硬さを増し、表面にくっきりと血管が浮いてくる。 「…ノエル、もういい」 「やだ」  ノエルは一刀のもとに拒否すると、キースの肉茎を深く咥え込んだ。  前にキースがしてくれたように、舌を動かしながら上下に扱く。 「ふう…っ」  顔を顰めたキースの口から明らかな快感の吐息が洩れ、ノエルは嬉しくて懸命に奉仕した。竿だけでなく袋も口に入れて、あむあむと優しく食む。  それから、また口で竿を扱いた。  唇をきつく窄めて上へ吸い上げてから、下へ動かす。キースの肉茎が硬く張り詰め、どくどくと脈打つのを感じたノエルはうっとりと目を細めた。これが自分を悦ばせるのだと思うと、いよいよ愛しくて仕方ない。  何度もきつく扱かれて、キースは限界へ近づいていった。 「ノエル、口を離せ」 「やら。ほのままらひへ」 「ノエル、駄目だ」  ノエルはキースの制止を無視して、逆にもっと奥へと迎え入れた。えずきそうになりながらも、キースの太く長い肉棒全てを口の中に収める。  苦しいけれど、ゆっくりと頭を上下に動かし何度も喉奥まで飲み込むと、キースの体がぶるっと震えた。 「…くそ…っ」  もう少し、と思ったところで急にキースが体を起こした。 「ん…っ」  ノエルの口からキースの肉棒が外れてしまう。  抗議の声を上げようとノエルも体を起こすと、その口元に赤黒い怒張が押しつけられた。  ノエルが反射的に口を開けると、それが無遠慮に押し込まれる。必死に喉奥を開くと、キースの手に後頭部を固定され、がつがつと打ちつけられた。 「んっんんっ、んんっ…んっ、んんっ」 「ふっ…」  吐き気に耐えて涙目になりながら、キースの雄を懸命に受け入れる。 「…出すぞ…っ」 「んっ」  ぶるっと震えたあと動きを止めたキースの先端から、ノエルの口内へどくっどくっと濃い粘液が放たれた。  大量の精が口の中に溜まっていき、溢れそうになってノエルは慌てて飲み込んだ。  ごくっごくっ。  それでも、飲み切れないほどの量が吐き出される。  ノエルは瞳を潤ませ、恍惚とした表情でそれを受け止めた。 「ふっ…」  キースは全て出し切ると、ノエルの口から肉茎を抜き取った。  ノエルが蕩けた顔で見せつけるように口を開ける。  中には白濁がたっぷりと溜まっていた。  舌の上にそれをのせ、キースに見えるように差し出す。  ノエルはそれを喜悦の表情で、嬉しげに嚥下した。  ごくっごくっごくん。  喉に張りつくような感覚すらも愛おしい。  全て飲み下して、ノエルは再び口を開けた。 「全部飲み込めたな」 「ん」  えらいえらい、とキースがノエルの頭を撫でる。  キースは腰を下ろし、ノエルにキスした。  口の中に舌を入れ、口内を舐め回す。当然だが、青臭くて不味い。  本当なら自分のものなど舐めたくはないが、ノエルの中を汚したままにしたくなかった。中に残ったものを綺麗に舐め取り、唾液を送り込んで青臭さを薄める。 「気持ちよかったか…?」  ノエルがおずおずと尋ねる。 「めちゃくちゃ良かったぞ」  キースが答えると、ノエルはふふっと笑った。  それが余りにも幸せそうで、キースはノエルを抱きしめて、ベッドへ倒れ込んだ。  体をぴったりと密着させると、ノエルの中心がまた緩く勃っている。 「俺のしゃぶって感じてたのか?」  意地悪く聞くと、むっとノエルが顔を顰めた。 「仕方ないだろ。生理現象だ」 「ふうん。で、これはこのままでいいのか?」 「…よくはない」  困ったように眉根を寄せたノエルは、すりっとキースに腰を寄せた。  自分の肉茎をキースのそれに擦りつける。  すりっすりっと動かすと、キースも応えるように押しつけた。  しばらく、ゆらゆらと腰を動かして、雄同士を擦り合う。 「んっ…ふっ…」  ノエルの後孔が疼き始めた。  きゅんきゅん、と腹の奥が物欲しそうに蠢き、蕾が勝手にはくはくと閉じたり開いたりする。 「…どうした?」  もじもじするノエルに、キースはわかっていて尋ねた。  ノエルがううっと顔を赤く染める。  快感に身を委ねると、どこまでも淫乱になるくせに、少しでも理性があるとこうやって恥ずかしがるところがあざとい。  だが、その理性を投げ捨てさせるのが楽しくもあるのだ。  キースはノエルの耳元に口を寄せた。 「欲しいんだろ?」 「…ん」 「なら、ちゃんとねだってみろ」  言われたノエルが困ったようにキースを見る。  だが、キースは余裕な表情を崩さない。  ノエルはううっと少し唸ったあと、渋々といった様子で口を開いた。 「…後ろに、キースのが欲しい…」 「どこに何が欲しいって?」  キースがわざとらしく聞き返すと、ノエルが目を吊り上げた。 「お前、わかってるくせに…!」 「いや、言わなきゃわかんねぇだろ」  ノエルは再び小さく唸ってから、キースの胸に顔を埋めた。 「…後ろの穴にてめぇのこれを挿れろって言ってんだよ…っ」  これ、のところでキースの肉茎を掴む。  キースは思わず、あははっと大きな声で笑った。 「お前って案外、口悪いのな」 「……幻滅したか?」 「んな訳ねぇよ。お互い様だろ」  口が悪かろうが意地っ張りだろうが、ノエルはノエルだ。この冷えた心に火を灯したのはノエルなのだから。  キースはまだ不安げなノエルに口づけて、体を起こした。 「じゃあ、四つん這いになれ」 「…ん」  ノエルは言われた通りに手をついて、その場に四つん這いになった。  キースが後ろに回る。  それだけでノエルの蕾はひくひくと動いた。  だが、キースはすぐには挿入しない。  ノエルの尻の割れ目に肉茎を載せ、ずりっと前後に擦った。 「あ…んっ」  挿入するには、まだ硬さが足りない。  キースはノエルの尻の谷間に自身をずりずりと擦りつけた。時折、先端で蕾をつつく。 「あ…はぁ…」  ノエルが小さく喘いだ。  これだけのことにも敏感に反応してしまうのはキースのせいだ、と思う。  キースが自分の体を作り変えてしまった。  キースに触れられた場所、全てが余すところなく性感帯になってしまうのだ。  そうでなければ、こんなに感じるはずがない。他の誰かではきっと、こうはならない。  もう体を震わせるノエルを見ると、キースもぐっと昂ってきた。  張り詰めた怒張をノエルの蕾にあてがうと、そこが無意識に収縮する。  その細腰を掴んで、まずは雁を侵入させた。 「ああ…んっ」  エラの張った部分が入れば、あとは内襞が勝手に蠢いてキースの雄を飲み込んでいく。 「ああ…ぁぁっ」  ずるるっと根元まで埋まると、みっちりとした感触に包まれた。熱く、きつく、それでいて柔らかく絡みつく。  ――何度、味わっても堪らなく心地いい。  キースはゆっくりと抽挿を始めた。  ぎりぎりまで引き抜いて、内襞をじっくりと堪能するように挿し入れていく。 「あぁ…いい…」  ノエルから感じ入ったような溜息が洩れた。  キースの熱はいつ感じても、何度感じても、いつもノエルをとろとろに蕩けさせる。  熱くて、気持ちよくて、そして、愛おしい。  キースの少しゆったりしたストロークにノエルも合わせて、体を揺らしながら中を締めたり緩めたりする。  時折、キースがノエルに背中に口づけ、所々に赤い痕を残した。  気持ちが通じ合った行為は、激しくなくても充分な官能をもたらしてくれる。 「ああ…はあ…ん…いい、きもちいい…」 「俺もいいぞ」 「ん…うれしい…」  また、こうして繋がれて嬉しくて幸せで。  それだけで、どんどん体が高まっていく。  ノエルの雄もつんと上を向いて、先走りがぽたぽたとシーツに染みを作っていた。 「ああっはあっ、あんっいいっ、あっあっ」  ノエルの声がどんどん艶を帯びていく。  それに煽られるように、キースの動きも激しくなった。ノエルの腰をぐっと掴んで力強く押し込む。  ぱんと膨らんだ前立腺を押し潰すように、ぐりぐりと抜き挿しすると、ノエルは堪らず甲高い嬌声を上げた。 「ああーー…っ、ああんっはぁっ、すごいっ」 「気持ちいいな」 「うんっ、いいっ、きもちいいっ…!」  キースが荒々しく抽挿を始めた。  ノエルの体はびくびくと震え、やがてがくっと肘が落ちた。あまりの快感に、徐々に自分の体を支えられなくなっていく。  尻だけを高く上げた状態で、それでもキースの責めを受け続けた。 「あんっいやっ、ああっだめっ、はあっあっ」  切羽詰まった喘ぎ声が止まらない。 「ああっやだっ、もうイっちゃう…っ!」 「イっていいぞ」 「やあっまだだめっ…キースも…っ」 「我慢は良くねぇな」  キースはにやりと笑って、一層激しくノエルのしこりを削った。ゆさゆさとノエルを揺さぶりながら、ぐちっぐちっと粘着質な音をさせて追い立てる。 「ああっだめっ、ああんっ、イく…イくっ!」  ノエルの背中が弓なりにしなって、勃ち上がった雄から少し薄くなった精が吹き出した。 「ああぁ…っ」  がくがくと震える手足は完全に力を失い、ノエルはその場に突っ伏した。伏せた体がびくびくと小刻みに痙攣している。  キースはノエルの上にのしかかった。  一度、抜けてしまった肉棒を強引に捻じ込む。 「ああっいやっ、イったばっか…っ!」 「自分だけイくのは不公平なんだろ?」  意地悪く言って、キースは構わずノエルの中を抉った。 「この体勢だと、イイとこに当たるよな?」  ごつごつと容赦なくしこりを突き刺す。 「ああんっだめぇっ!!」  ノエルの目からぽろぽろと涙が零れた。  達したばかりの体を強制的に高みへと連れていかれて、『苦しい』と『気持ちいい』に同時に苛まれる。 「あっあっ、やだ…っ、やあっ…むり…っ」 「大丈夫だ。まだイケるって」 「ああ…そんな…」  ノエルの気持ちとは裏腹に、体は貪欲に快感を拾い上げていた。  キースを受け入れる後孔がぎゅうぎゅうと締めつけを強め、ベッドと体に挟まれた亀頭からはだらだらと先走りが溢れ、シーツをはしたなく濡らしていく。 「ああっやんっ、はあっ…んんっ、あぁんっ」  ノエルはぎゅっと枕に抱きついた。  何かに縋らないと、自分がどこかへ行ってしまいそうだ。  それを見たキースが、ノエルの手を枕から引き剥がした。その手を上から、指と指が絡むように握り込む。  ノエルも絡められたキースの指に力を込めた。  しっかりと繋ぎ止めていてほしい。  もう二度と離れないように。 「…奥まで挿れるぞ」 「…んっ」  キースがぐっと押し込むと、亀頭が普段は届かない奥の奥まで入り込んだ。 「ひっ、ああぁぁ…っ!!」  ノエルの目の前にちかちかと白く星が飛んだ。  星だけでなく、自分の意識さえ飛んでいってしまいそうなほどの快感。こんなのは知らない。 「ああーーっ、ああーー…っ!!」  ずぷっずぷっとキースの怒張が奥の奥を抉って、全身を信じられないほどの快感が突き抜ける。ノエルはもう訳がわからず叫ぶように喘ぐだけだ。 「…ふっ、すげえ締めつけ…」 「ああぁぁっ、ああぁんっ、ああああっ!!」 「…もう聞こえてねぇか」  開きっぱなしの口から狂おしいほどの嬌声を上げ続けるノエルに、それでもキースは抽挿を続ける。  もっと、もっとだ。  もっと感じて、もっと淫れてしまえ。  俺なしでは生きていけないほどに。 「ああぁぁんっ、イく…っも、イくぅ…!!」  無意識に口に出すのを聞いて、キースはストロークを速めた。 「あああぁぁぁ…っ!!」  ノエルの体がぎゅうっと強張った。  中が一層きつく窄まり、キースの肉棒を食い締める。 「…ふっ」  その刺激で、キースは熱く滾った精をノエルの奥深くまで放出した。  ノエルの体がキースの下でびくんびくんと跳ねて、それからぐったりとベッドに沈み込む。  その横顔は完全に放心状態だった。全身をびくびくと震わせて、はっはっと浅い呼吸を繰り返す。  キースはノエルを抱き込んで、体勢を入れ替えた。ノエルを上に載せ、優しく抱きしめる。  その頬や額、唇に口づけ、すりっと頬ずりした。 「…好きだ、ノエル」  そっと耳元で囁く。 「…好きだ、愛してる」  虚空を見つめていたノエルの瞳がキースを捉えた。 「…俺も、すき」 「ああ」 「すき、…あいしてる」  間近で見つめ合いながら、想いを告げ合う。  二人は確かめ合うように口づけを交わした。  その夜、二人は食事を取ることも忘れて夜更けまで睦み合った。      

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