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第13話 学祭

 中等部の頃になると、タイガを含めみな心身ともに成長していた。学業は忙しいが、思春期の真っ只中だ。やはり、異性の存在を意識するようになってくる。中には他校の女子とすでに付き合っている者もいた。タイガも異性に興味があったが、生真面目すぎるため学業を優先し、積極的に異性と関わろうとはしなかった。   「タイガ。今度彼女の学校で学祭があるんだ。一緒に行かないか?」 タイガのルームメイトのオーガスタがタイガを誘った。 「勉強が忙しいからなぁ…。」 「お前、要領いいんだから。もうテスト範囲は完璧なんだろ?たまには息抜きしないとな?」 自分の誘いにいまいちノリの悪いタイガにオーガスタが畳みかける。 「タイガは顔もそこそこいいんだから、楽しまなきゃ損だぜ。こんなこと言ってくれる友達いないぜ?」 タイガはその時異性に興味がないわけではなかった。ただ、寮に入ってから同世代の異性に接したことはほぼ皆無だった。自分はうまく話せるのか?男が楽しませなければいけないのではと考えると気か重くなるのも事実だった。しかし、せっかく誘ってくれたオーガスタの気持ちもありがたく、断るのは申し訳なく思った。 「じゃ、行ってみようかな。」 「そうこなくっちゃ。」  学祭はタイガのいる学校とやっていることは同じような感じだった。しかし、唯一大きく異なるのが女子がいるということだ。オーガスタの彼女は感じの良い子だった。タイガから見てもお似合いの二人だ。付き合っていくと二人でいるのが自然になって、こんな風になるのだろうか?タイガには未知の世界だ。 「こんにちは。タイガくん、私の友達紹介するね。いい子だから!」 オーガスタの彼女の後ろに俯きがちに一人の女子がいた。 すらっとしていて背丈はタイガと同じくらいだ。170センチ近くある。 「サクラ。人見知りで口下手なんだけど、いい子だから!」 「よろしく。」 タイガは努めて笑顔でサクラに話しかけた。しかし、サクラは俯いたまま、こくりと頷くだけだった。 「ちょっとっ。ちゃんと挨拶しなさい!」 それを見たオーガスタの彼女がサクラに喝を入れる。サクラはほとんど聞き取れない声で「よろしく」と言った。俯きがちなサクラの顔は良く見えない。センター分けのダークブラウンの髪のせいで顔が隠れてしまうのだ。 オーガスタはタイガに頑張れと目くばせをし、彼女と二人前を歩く。彼らはとても楽しそうだ。逆にタイガとサクラの間は重い沈黙が続いた。 「俺たち、向こう見てくるからさ。サクラちゃん、こいつのことよろしくねー。」 急にオーガスタが別行動を提案した。タイガは絶対に無理だと思い引きとめようとしたが、二人は引き留める間もなくさっさと行ってしまった。 「えーっと…、学校よくわからないから、案内してもらってもいいかな?」 なんとか気まずい空気を取り繕おうとタイガが提案した。 「うん。」  その後、タイガとサクラは校内を周り時間をすごした。その間会話が弾むことは一切なかった。 タイガは頑張って話をしたのだがサクラの反応が薄い。そのため途中から自分一人で話しているような気分になっていた。タイガは特に話し好きで饒舌なタイプではない。喉も乾いてきたしちっとも楽しくない。タイガは友達と合流する頃には早く寮に帰りたいと思っていた。そして悟った。自分には異性と交際なんてまだ早すぎたんだと。共通の話題がなく、苦痛でしかない。違うってことがこんなに疲れるのかと痛感していた。  話の流れでまた四人で会おうと約束はしたが、タイガはもう懲り懲りだと思っていた。 サクラは悪い子ではない。自分が幼すぎたのだ。サクラにはもっと大人で、強く引っ張ってくれる男がお似合いだと思った。

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