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第21話 二人の関係

 結局、あの後タイガは二人の後を追うことはできなかった。カツラに会うこともなく、真っ直ぐ自宅に帰った。  翌る日、カツラからメールがあった。仕入れは順調で、一日早く帰れる。カツラには珍しく日曜日は休みになるから会わないかと。タイガは携帯画面を見つめた。昨日はほとんど眠れていない。カツラからのメールはタイガに好意的な内容だ。昨日のできごとにはなにかわけがあるのか。いくら考えてもタイガ一人では答えはでない。カツラから真実を聞くしかない。  考えあぐねたあげく、タイガは日曜日にカツラに会うことにした。ツバキと鉢合わせしたカツラの自宅はできれば避けたかったが、カツラから自宅で会おうと先に返事が来てしまった。出張で疲れているカツラを外に連れ出すのは気がひけたし、カツラに変に思われても嫌なので、タイガは自宅で会うことを了承した。  日曜日。昼前に自宅を出、カツラの家に向かう。タイガの気分とは裏腹に天気は快晴だ。雲一つない。心地よい風が頬にあたる。タイガの自宅からカツラの自宅までは一駅なので、タイガは頭を整理するためにも歩いて行くことにした。  どうきりだせばいいのか。浮かれて出張先にまで行かなければよかたった。タイガはカツラに会いに行くことを勧めたフジキを今さらながらに恨めしく思った。彼のせいではないことは重々承知しているのだが。  〇〇までタイガが行って、カツラとツバキが仲睦まじくいるところを目撃したと知ったら、彼ははどんな反応をするだろう?〇〇まで来ていたなんて、引かれるかもしれない。考えても考えても、思考は悪い方にばかり向かった。なんの検討もつかないまま、気づくとカツラの自宅前まできていた。 「タイガ!さすが、時間通りだ。入って。」 カツラの様子は普段と変わらずいつも通りだ。どちらかといえばかなり機嫌がいいように見える。他になにか変わったところはないかと、タイガは様子をうかがった。 「どうした?なんか暗いぞ。」 「カツラ…。聞きたいことがあって。」 「ん?なに?」 「出張は楽しかったか。」 「んー?旨い酒を試飲できるのはいいけど、値段の交渉とかは俺苦手だから。疲れた。」 「そっか。」 カツラは黙り込むタイガをみつめる。彼の眼差しが変わる。どうやら気づかれたようだ。 「なに?なんかあった?」 「あのさ。引かないで聞いてほしいんだけど…。俺、カツラに会いに〇〇まで行ったんだ。」 「え⁈」 「泊まっているホテルわからなかったか?連絡くれたらよかったのに。いい酒があったのに。」 カツラは全く悪びれる感じではない。隠しごとはないのか。それとも、ツバキのことを知っているはずがないと思っているからだろか。タイガは意を決して聞く。 「ツバキといただろ?腕組んで、すごく仲良さそうだった。」 タイガは一気にまくしたてた。カツラの顔を直視できない。しかし、カツラがタイガの言葉に驚き、息を呑むのがわかった。 「タイガ、ツバキは友人だって言っただろ。あいつ、酒に詳しんだよ。実家が酒造家らしくて。今回、ほんとは店長が行くはずだった。俺はまだ店長程の知識がない。だから、ツバキに同行を頼んだんだ。やましいことはなにもない。」 でも恋人のようだった。喉元まできた言葉をタイガは飲み込んだ。 「ツバキは酒癖が悪い。誰にでも枝垂れかかる。」 タイガはようやく顔を上げ、カツラを見た。カツラは真っ直ぐにタイガを見ている。その瞳は嘘はないと言っていた。 「そっか。わかった。なら、いいんだ。」 「ほんとに納得してる?タイガ、俺はお前といたかった。残念だ。声かけてくれれば。」 「うん...。」 あんな状況で声をかけられる人間なんているんだろうかとタイガは思った。しかし、カツラを信じられなかった自分もいけなかったと、これ以上詮索することはやめた。 「タイガ。」 カツラがこちらに近づいてきた。彼はキスをしようとしている。 ピンポーン。  まさに見計らったようなタイミングでインターフォンがなった。カツラははぁと小さなため息をし立ち上がり、玄関に向かった。

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