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第2話

 だいたいプライバシーなど、なきに等しい相部屋制に問題がある。八つ当たり丸出しでそう思う。連夜のエロ活が情緒に影響を与えるからといって、寮監に部屋替えを願い出るのはためらわれる。  もしも俺の後釜と、雪也がしごきっこするまでに親睦を深めたら……反射的に跳ね起きるのをギリギリ堪えた。  ──古くは自家発電と呼ばれたナニを何するは、ルームメイトの留守中にこっそり行うこと。  そう、冗談めかしてルールを設定しちゃえば、さすがに雪也も反省して、以後はひかえてくれるだろう。日記を盗み読みしているみたいな現状を打開するには、もっと手っ取り早い方法がある。たったいま寝言を装って、 「右手を酷使して腱鞘炎は恥ずい……」  バレているぞ、と暗に匂わせるのだ。抑止力が働いて平穏な夜を取り戻せる……かもしれない。  そもそも海斗自身、猛省すべき点があった。想い人とひとつ部屋というハートが乱舞するようなシチュエーションに、いきおい目が冴える一方だった最初の夜に対応を誤った。淫靡な雰囲気が漂いはじめても現実味にとぼしくて、まごついているうちに黙認する形になった。要するにツケが回ってきて現在に至るのだ。  いわば共犯者になり下がったせいで強気な態度に出られずじまい。それに雪也は果てる瞬間にかぎって、(つや)っぽい声を洩らす。余韻に浸っているのか、けだるげに後始末をする気配など、童貞殺しの称号を進呈したいほど悩ましい。  言いかえるとオカズの大盤振る舞いも同然で、メリットとデメリットを秤にかけると「おいしい」。  あの、すさまじくエロい声がもうすぐ放たれる予告めいて、底板がみしりと鳴った。海斗は努めてゆっくりと喉仏を上下させて、生唾を呑み込んだ。必要に迫られて、とはいえ秘技・タヌキ寝入りがめきめきと上達していくのが、我ながら恐ろしい。  他方、うっかり勃ってしまったムスコをなだめるのが、ひと苦労だ。雪也が寝入るのをじりじりしながら待ったすえ、トイレに駆け込んでヌく今日このごろ。  便器の尿だまりが濁って泡立つさまに虚しさを覚える。それでいてが耳に甦ると、たちまちムラムラしちゃって、 「生理現象、健康な証拠ですし?」  屁理屈をこねてカリを掌でくるむありさま。

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