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第10話

「……っ」  ひとしごきしたとたん、雄々しく屹立する。ふたりを隔てるものは上段の底板のみという、すぐそこで想い人が眠っている状況下でオナるのは、朽ちかけた丸木橋を逆立ちで渡るくらいスリリング。  なおさら昂ぶり、とろりと雫がしみ出す。すべりがよくなるのに比例して指づかいに拍車がかかり、無心に快感を追い求めるさまは修行僧もかくや、だ。リズミカルにペニスをあやすにつれて、背徳感をない交ぜに背筋が甘く痺れた。 「く……っ!」  足が独りでにばたついて上掛けを蹴散らす。雪也が夜な夜なひとりエッチに耽る心情が、現在(いま)は理解できる。  キレると破壊神と化すやつを〝お尻ぺんぺん〟で挑発する、火薬が多めの手持ち花火を振り回す──等々。やってはいけないことほど面白い。  同様に、ひやひやするぶん倍増しに感じるのだ。  外はメイストームの様相を呈し、()という樹の枝々が猛烈にしなう。もっともペニスの猛りっぷりに較べると、狂風だってそよ風並みに可愛いものだ。  とはいえ、横向きに寝そべった体勢でまさぐるやり方だとイマイチ物足りない。もともと壁にもたれて胡坐をかいたうえで、ブラッシングするように裏筋をこするのがお気に入りのスタイルだ。  トイレの個室派に転向せざるをえない学期中は封印しているそれを、解禁しちゃおうかな……。  ためらったのも束の間、起きあがって両足を折りたたんだ。たったいま天井灯が点いたら、潜望鏡のごとくそそり立ったペニスが、スポットライトの中に浮かびあがったような光景があらわになるはず。  心臓がバクバクすると、先っぽがてらてらと光る。カリに掌をかぶせて、振動を与え気味に揺らした。 「……ん」  吐息が官能的な震えを帯びていく。制約が課せられたなかだと逆に感度が高まり、早くも爆ぜそうな勢いだ。  このへんで利き手じゃないほうに持ち替えて、自分を焦らしぬいてからフィニッシュと行きたいのは山々だが、(いたずら)に長引かせるのは禁物だ。残念ながら、さくっとイクのを優先しなきゃ──だ。  オカズは、よりどりみどり。最近ハマっているのは童貞喪失の巻、という煩悩まみれの代物(しろもの)だ。雪也の胸をはだけさせて、珊瑚色のちっちゃな乳首(たぶん)を舌でつつく場面で幕を開ける完全版は、最低二回はドピュッ! といく超大作だ。  指と舌を巧みに使い分けて、可憐な蕾をねっとり解きほぐすくだりは我ながら圧巻の出来で、オカズの殿堂入りは間違いない。ただし今回は諸般の事情によりダイジェスト版の出番だ。

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