11 / 15

第11話

 好きだ、と潤んだ瞳を見つめて熱っぽく囁きつつ下肢を開かせる。そして花芯に穂先をあてがう。ぎこちなさを燃えたぎるような恋情で補えば、初めて同士でも必ず上手くいく。  それでも玉門をこじ開けにかかると、肉の環が狭まって怒張を押し返してくるだろう。せめぎ合い、だが、ひとつに結ばれたいのは同じ。だから唇がふやけるほどにくちづけを交わしながら、じわじわと花筒を遡っていく。  おっと、刺し貫かれる衝撃でうなだれた(であろう)ペニスを愛おしむのを忘れる(なか)れ。  根元まで美肉(うまじし)にぴっちりと包まれるころには誂えたようになじんで、めくるめく世界へと手を携えて旅立っていく。雪也の(なか)は熱くうねって、吸盤が(そな)わっているようにまといついてくるに違いない。  凛とした(おもて)が悦楽にゆがみ、もっととせがんで……、 「く……っ!」  秒読み段階に入った折も折、 「爽やかなスポーツ小僧が幻滅だな。おおっぴらに寮の風紀を乱してくれた(かど)で、懲罰委員会を招集してあげようか?」  雪也がコウモリのように逆さ向きにぶら下がって下段を覗き込んできた。しかも、ご丁寧なことにフラッシュライトを点灯させたスマートフォンで照らしてきながら。  海斗は液体窒素を浴びたように凍りついた。無理もない。百戦錬磨の詐欺師だって一瞬、言葉を失う場面だ。  蒼ざめたかと思えば真っ赤になるのを尻目に、雪也は悠々と梯子を下りた。下段の真正面に立ち、ガマン汁の臭いが不快だと言いたげに鼻をつまむ仕種を交えて、圧をかける。 「溜まったものを射精()すのは健康な証拠でもあるし、魔が差すことは誰にでもある。今夜のところは大目に見るよ」  鷹揚に笑みを浮かべてみせるさまが、かえって白々しい。勇ましくエラが張ったイチモツへと(そそ)がれる視線は、鑑定士のそれのように鋭い。  海斗は呻いた。よりによってというタイミングで、特ダネをすっぱ抜くエグい真似をしてくださる。偶然か、いや絶対に確信犯だ。 「精液が逆流して睾丸が炎症を起こすことがあれば大変だ。おれのことは家具の一部とでも思って、遠慮しないで続きをどうぞ」 「……もういい、シラけた」  うわずった声で、それでも、ぶっきらぼうに答えて上掛けをかき寄せる。ひとまず股ぐらにかぶせ……そこねた。ひょいとかっさらわれたうえ、扉の手前まで飛んでいった。 「おま……ふざけんな!」  パニクるあまりフリチンで摑みかかるのは、みすみす相手を喜ばせるのと一緒。跳ね起きた拍子にペニスが揺れる。お辞儀をしたよう、あるいは竹刀を振りおろしたみたいに見えて、我ながらトホホだ。

ともだちにシェアしよう!