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3.病弱な少年と絵描きの夢 -1-

『ガチャ……』 「お邪魔しますーー…」 「ん、こっち、階段ーー。」 2階へと上がった二人は、夕人の部屋へと入った。 「正直言うとさ…俺もまだこの家に入るの、二回目だから。 勝手わかんないし、もてなしとかも全然できなくて……」 つまんないと思うけど。と気まずそうな表情をする夕人を見て、 「何言ってんだよ、もてなしてもらいにきたんじゃねぇし。何か、することない? 大きな物運ぶのでも、荷解きでも…なんでもお任せだぜ?」 速生はそう言って五分袖のウェアを捲り上げた。 力瘤を作って“筋肉あるから”というポーズを取ると、夕人は、はは…と気まずそうに苦笑いする。 「それよりさ…寒くねぇの?ずっとその格好…ジャケット、着たら?」 一応エアコンをつけているとはいえ、まだ何も生活感のない部屋は、物淋しく、余計に肌寒く感じられた。 「いや、ぜんっぜん余裕だけど? …………ぶぇっくしゅ‼︎」 また派手なくしゃみをした速生を見て、夕人は「だから…」とため息をついた。 平気そうな素振りは、少しでも自分に負い目を感じさせないための気遣いとわかった。 「ーー座ってて。俺、何か温かい飲み物でも探してくるから」 「えっ…いやそんなーー、」 『ガチャ、パタンーーータン、タン、タン…』 夕人は速生の断ろうとする言葉を遮って、足早に部屋を出て行った。 (そんな、いいのにーー。 無愛想だけど、本当はすげぇ、優しいんだよなーーー。) 自分とは対照的な、あまり人前で笑わなくて、初対面の人と仲良くなることなどまずあり得ないのだろうとわかる夕人の、小さな気遣いや思いやりが、とても嬉しかった。 少しずつ、夕人のことを知ることができている。 まだまだ沢山、これからきっと、知らない面を見ることができる。 そう思うと、嬉しかった。期待に胸は躍って、夕人本人がいない部屋の中で思わず、「これから仲良くしような。」と呟いていた。 (うわ、俺、ちょっとキモイかもーー?嫌われないようにしないと…) 少しでも困っている夕人の力になれたら。何かできることはないかーー… そう思いあたりを見回して、ふと、ある物に気付いた。

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