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傷跡 3-3
『ポタ、ポタ……ッ』
「ーーーっつぅ……っ」
左手に鋭い痛みが走り、目をやると白い半袖シャツが真っ赤に染まっている。
反射的に頭を両手で庇った夕人は、肘から手首にかけて大きな切り傷を負っていた。
「どうして……避けるんだよ、相模くん……?」
血走った目。夕人の手の深傷を見ても、風間は振り上げたナイフを手離そうとはしない。
「お願い…、もうやめて………っ風間さん……」
「そこぉっーー!!何してる!!
やめなさい!!」
『ドサッ!!』
「うぅーーっ……!」
騒ぎで駆けつけた駅員と警官が、すぐさま風間を取り押さえた。
「離せっ!!僕は、相模くんと…一緒にいるんだ!一緒にいないとダメなんだ!離せ!」
「きみ!大丈夫かっ!?」
後から来た駅員が下に座り込んだ夕人の元へ駆け寄り、すぐさまタオルで腕の傷を押さえて止血する。
「風間……さん……」
風間は夕人の方を見て叫び続ける。
「相模くん!大丈夫だよ!一緒に死のう!ほら!怖くないよ!先に僕がいくから…っ!離せって言ってんだろおおおおーー!!」
警官2人の体の間でもがき、暴れる。
ホームの黄色いラインを超えたところまで力ずくで体を引きずり、
電車が入ってくるアナウンスを耳に、手を伸ばす。
「離せえええええ!!相模くんと僕は、一緒にいくんだ!邪魔をするなああああーーーーっ!」
線路内へ飛び込もうと叫ぶ風間の姿に、あたりはざわめき、スマートフォンで写真や動画を撮る者たち。
『プァァァァーーーーン!!』
列車が危険を察知して警笛を鳴らす。
「暴れるなっ!!こいつ…!ダメだっ!人身起こるぞ!ーー早く応援っ!!」
「あああぁぁぁぁー!離せええぇぇぇーっ!!」
ーー俺………どうして、こんなこと……
「きみ!聞こえるか!返事して!ーー出血ひどいぞ!救急車!!」
「至急応援!応援願います!…××駅にで傷害事件!ーー」
周りの叫ぶ声が、耳に入らない。
夕人はそのまま、気を失ったーーー。
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