40 / 113

傷跡 3-3

『ポタ、ポタ……ッ』 「ーーーっつぅ……っ」 左手に鋭い痛みが走り、目をやると白い半袖シャツが真っ赤に染まっている。 反射的に頭を両手で庇った夕人は、肘から手首にかけて大きな切り傷を負っていた。 「どうして……避けるんだよ、相模くん……?」 血走った目。夕人の手の深傷を見ても、風間は振り上げたナイフを手離そうとはしない。 「お願い…、もうやめて………っ風間さん……」 「そこぉっーー!!何してる!! やめなさい!!」 『ドサッ!!』 「うぅーーっ……!」 騒ぎで駆けつけた駅員と警官が、すぐさま風間を取り押さえた。 「離せっ!!僕は、相模くんと…一緒にいるんだ!一緒にいないとダメなんだ!離せ!」 「きみ!大丈夫かっ!?」 後から来た駅員が下に座り込んだ夕人の元へ駆け寄り、すぐさまタオルで腕の傷を押さえて止血する。 「風間……さん……」 風間は夕人の方を見て叫び続ける。 「相模くん!大丈夫だよ!一緒に死のう!ほら!怖くないよ!先に僕がいくから…っ!離せって言ってんだろおおおおーー!!」 警官2人の体の間でもがき、暴れる。 ホームの黄色いラインを超えたところまで力ずくで体を引きずり、 電車が入ってくるアナウンスを耳に、手を伸ばす。 「離せえええええ!!相模くんと僕は、一緒にいくんだ!邪魔をするなああああーーーーっ!」 線路内へ飛び込もうと叫ぶ風間の姿に、あたりはざわめき、スマートフォンで写真や動画を撮る者たち。 『プァァァァーーーーン!!』 列車が危険を察知して警笛を鳴らす。 「暴れるなっ!!こいつ…!ダメだっ!人身起こるぞ!ーー早く応援っ!!」 「あああぁぁぁぁー!離せええぇぇぇーっ!!」 ーー俺………どうして、こんなこと…… 「きみ!聞こえるか!返事して!ーー出血ひどいぞ!救急車!!」 「至急応援!応援願います!…××駅にで傷害事件!ーー」 周りの叫ぶ声が、耳に入らない。 夕人はそのまま、気を失ったーーー。

ともだちにシェアしよう!