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傷跡 3-4
”名門塾講師の男、教え子の男子中学生をナイフで切り付け殺人未遂で逮捕
×日17時頃、xx区xx駅ホームで、男子中学生が男にナイフで切り付けられるという事件が起こった。男はその後列車が通過しようとする線路内へ侵入し自殺を図ろうとするが、駆けつけた警官に取り押さえられ未遂と終わり、現行犯逮捕された。男子中学生は左手に重傷を負ったが命に別状はないと見られる。
逮捕された男は、被害に遭った中学生の通う個別名門塾の講師で、二人の間には何らかのトラブルがあったかと思われーーーーー”
『パシャッーー!パシャッ!パシャッ‼︎』
カメラマンの構える真っ白なフラッシュの中、記者が勢いよく身を乗り出して叫ぶ。
「少し、お話聞かせてもらえませんか!?塾講師の容疑者と、息子さんはどのような関係で!?」
「……何も話すことはありません!」
「ストーカーされていたというのは事実でしょうか!?男の容疑者から、特別な感情を抱かれていたというのは本当でーー!?」
「息子は病院に入院しているんです!これ以上騒ぐなら警察呼びますよ!!お願いですから…そっとしておいてください!」
タワーマンションの玄関には記者たちが連日連夜張り込み、近隣住民も外を歩けばインタビューに声を掛けられる。
「ーーー刺された子、すごく綺麗な顔した男の子だったらしいわよ……」
「ーーーストーカーされてたんですって…いい年の塾講師が中学生を?怖い世の中ね……」
「ーーーもう、習い事なんて1人で行かせられないわよ……。お互い、気をつけましょうね」
xx区立病院入院病棟の一室。
誰もいない静かな個室のなか、夕人はベッドに横たわり、ただ、真っ白な天井を眺めていた。
風間に切り付けられた、左手首から肘にかけての傷跡は、15針も縫わなければならないひどい切創だった。
「うぅ……っ……うっ……ひっく……うっ……」
幸い動脈を傷つけていなかったため命に関わるほどではなかったが、痛み止めが切れるたびに、
ズク、ズク…と波打つようなひどい痛みに襲われ、夕人は苦しんだ。
ーー自分はどうしてこんな目に遭うんだろう?
一体、何の罰を受けているのだろうかーーー?
「うぅっ……何で………っ…うっ……ひっ…く…」
ただひたすら自問自答し続け、涙を流しては、また眠りについていた。
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