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道標 2-1

夕人と速生が通う市立第一高校は、一般的な教科目を学ぶ普通科、プログラミングなどIT関連に特化した情報処理科、語学・主に英語を専修する国際教養科という3つの学科で学年ごとにクラスが別れていた。 普通科を希望、配属された夕人と速生は、三年間同じクラスで専攻科目も同じとなり、学校にいる間、二人はまず離れることはないということだった。 「相模くんと玖賀って、ほんっと仲良いよなー。」 昼休み。 2人が学食の食堂で昼食をとっていると、同じクラスの友人が話しかけた。 「えへへ……そ、そうかな?」 「いや、何で照れてんだよ。」 速生は学食のカレーを食べながら謎の照れ笑いをする。 「だって相模くんてさ、弁当持ってきてんだろ?それ持ってわざわざ学食まで玖賀に付き合って……いつ見ても絶対に2人でいるからさ、ほんと仲良いんだなぁーと」 夕人は母の手作り弁当を、速生と同じ学食のテーブルに座って食べていた。 「いやいや〜〜だって俺が誘ってあげないと…夕人、ぼっち飯になって可哀想かなって……」 「は〜〜〜い〜〜〜? 誰が毎日昼休み一番に“頼むから学食ついてきて〜”って言ってんだっけ?」 「はは〜〜夕人さまぁー、恐れ入ります。 あ、カレーひとくち食べる?」 「いらねぇよ!」 友人は2人のやり取りを見てはははと笑う。 「いや、ていうか、速生お前は普通にそれ、2食目だもんな?おばさんの作った弁当いつ食べたんだよ?」 「え、あー……朝練の後かな?いやだって、腹減って仕方ないんだよなー、なんたって、育ち盛りなんで」 「それ以上まだでかくなるつもりか?」 速生は高校に入学してからまた更に背が伸びて、もうあと数センチで180cmに届きそうなほどだった。 やっと160cmそこそこまで伸びてきた夕人とはえらい違いで、2人はどんどん身長差が開いていく。 「ていうかなぁ、夕人と一緒に行動してたら、驚くぞ? 学食のおばちゃんからは何か注文すれば必ず特盛出てくるし、購買でノート1冊買ったらおまけに3冊持って帰ってきて、自販機ですらジュース当ててくる………夕人、お前ってもはや歩くクーポン、いやギフトカード!」 「最後のはたまたま強運ってだけじゃ……。ってまさかそれ目当てか?玖賀お前やらしいやつだな。 でも、なんかわかるなー、相模くんは、なんかどこか特別感あるっていうか、高級品…的な? 飲み物で例えるなら、 相模くんはロイヤルミルクティー。 玖賀は…………麦茶、みたいな」 「ぶふっ…む、麦茶……」 夕人が口の中のご飯を吹き出しそうになり、俯いて堪える。 「んだよ、麦茶なめんなよ!?ってかお前、例え上手いじゃん!まさにそれだわ。 けどなー、よくよく考えたら夕人は“相模くん”で、俺は“玖賀”って呼び捨ての時点で、格差バリバリだからな!」 夕人は弁当をクロスで包んで、静かに帰り支度をする。 「俺ちょっとトイレ行ってくるけど……速生、先戻る?」 「いや!待ってるぜ、あ、連れションしたい?ついていこうか?」 「いや結構です」 夕人はスタスタと学食を出た。 「ーーーちょっと!ほら、相模くんやっと1人になったよ!今しかないって」 「ーーーこんなチャンス滅多にないから!行っておいでよ!」 「ーーーあのいない間に行くしかないよ!頑張れ!」 「あっ、あの!!相模くん!」 本館校舎へ向かおうとしていると、後ろから突然声をかけられて夕人は立ち止まり振り向いた。 後ろには、別クラスの女子が3人立っていた。その内の1人が顔を真っ赤にしながら、少しずつ夕人へと近づいてくる。 「…………何?」 ーーートイレ行きたいんだけどなーー……。 無愛想な態度をまったく崩す気のない夕人の問いかけに、女子は小さなメモ用紙を夕人へ手渡そうとする。 「あっあの…!これ!私のlineのIDです! 良かったら、あの、相模くんのIDも教えてもらえませんか!?」 「え………いやー、俺、あなたの名前もクラスも何も知らないけど。その相手に、そんな大事なもの、渡したらダメなんじゃない? まず、そもそもなんで?」 夕人の言葉に女子は少しショックそうな顔でひるんだが、まだ諦めない。 「あのっ!!私、ずっと相模くんと、仲良くなりたいなって…思ってて! ただいつ見ても……なかなか1人でいる時がなかったから、今しかないと思って! あの、もし良ければ、友達からお付き合いーー…」 「何してんのーーーーー?」 「!」 突然夕人の後ろから間に割って入ったのは、不自然に満面の笑顔をした速生。 「あ、きみら、情報処理科のクラスじゃん?そっちのクラスにさぁ、伊勢っているだろ? 夕人はさー、伊勢と、俺とだから、まずは伊勢と仲良くなってくるのはどうかな? あ、別に俺とでもいいよー?ID交換するー?」 「いえ……大丈夫です!!!」 速生の言葉に、女子3人はすぐさまその場から逃げるように去って行った。

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