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道標 2-2

「ふっ……撃退成功。 伊勢、勝手に名前を借りたぜ…悪いな。 まあもしかしたらこれであいつにもモテ期来るかもだし?」 「速生……お前、いつからいたんだよ?」 「え?ついさっきだけど? 俺もあの後すぐカレー食べ終わったら皿下げて追いかけたんだ。 ほら、夕人、弁当箱」 そう言って速生は、夕人が学食のテーブルに置いてきた弁当箱をぽん、と手渡した。 「あぁ…さんきゅ。 てか………俺と速生と伊勢くん、マブダチだったんだ?ま、マブダチって…お前今どき……」 夕人が思い出して笑いを堪えていると、 「え?だめ?あ、の方が良かった?」 「ぶふっ、い、いや……。 何でもいいけどさぁ……」 夕人は、実は知っていた。 なぜ速生が、お昼時ですら必ず行動を共にして、いつも夕人のそばを離れないのかを。 どこに行っても目立ってしまう見た目をした夕人は、それこそ入学したては学校内を移動するのも一苦労だった。 学校中のいろんな女子生徒が連絡先を聞こうと待ち構えていたり、アルバイトへの誘いや、握手してもらうための勝手に作られた謎の列ができていたり……と、噂が噂を呼んでさらに人だかりができるというまさにアイドル並みのプチ社会現象が起きていた。 また当の本人の夕人にその気が全くないものだから、余計にプレミア感がついてしまうという皮肉さ。 「正直言って……人の顔だけ見て、“仲良くなりたい”とか、ましてや“好き”だなんて思えるやつの気が知れないんだよ。 一言も喋ったことのない相手の、何を知って、どう関わっていきたいなんて思えるのか。 俺にはわからないし、はっきり言って、そんなこと言う相手とは喋りたくもない」 「おお……なんか夕人さんらしいっす……」 夕人がこれまでに、幼い時からずっと本当にを経験した上で、容姿を持て囃されるのを嫌がっていることが速生にはわかっていた。 この学校で、それをわかっているのは自分だけだーーー、と、そう思っていた。 一緒にいることで、夕人が少しでも、自分を隠れ蓑にして、心安らかに、普通に過ごしていけるのならーーー……… (ーー俺はいつだって、夕人のそばにいるよ。) どちらから言うわけでもなく、言われるわけでもなく。 何となくだけど、お互いがわかりあい、受け入れ合っている。 「あ、5時限目、選択科目だったな。速生、何とったの?」 「え、それはもちろん……」 「芸術?」 「あったりーー!」 「へぇ、速生に、芸術の心があるとはな……」 「え??あのさ、それはなんでかっていうともちろん夕人も芸術とってると思ったからだぜ?」 「俺、音楽とったけど」 「!!」 「うっそでーす。 じゃ、早く教室戻って移動しようぜ。」 「…………」 (うっそでーす。だって!ちょっと、可愛すぎるだろ!夕人!) 「なに、にやけてんだよ?怖いぞ…」 「何でもありませーん!!」

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