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告白 2-2

広い館内、夕人から頼まれた資料を探す。 数年ぶりとはいえ、当時は毎日のように通っていただけあり、館内のジャンル分けされた棚の位置は手に取るようにわかった。 (あ、ここだなーーー…) 速生は”アメリカ西海岸”というタイトルの観光史料や歴史書など、イメージ写真が多めに入っているものを数冊棚から取り出した。 (さすがは図書館だなー……。 画集もたくさん扱ってそうだし、今度は夕人も一緒に連れて来よう) 速生は貸出受付のカウンターに、本とカードを差し出す。 「はい、4冊ですね。返却日は1週間後のーー…」 受付の職員は見たことのない若い女性だった。館内を見回してみても、中学生当時よく見かけていた職員は誰一人いなかった。 (三年も経てば、変わるのも当たり前かーーー……) 少し残念そうに、本をカウンターから受け取った………その時だった。 ガラス張りの出口から見える光景、先ほどの老女が、ゆっくりと、ベンチから立ち上がり、歩道に向かって歩いている姿が見えた。 ーーー何だか、様子がおかしい。 足取りはやけに辿々しく、押し車についた手を震わせて、痛む腰を庇う姿が、ガラスのドアを一枚隔てた遠目からでもわかった。 「あ、あの……、すみません!これ、ちょっと置いといてください!」 「えっ……!?あ、あのーーー…!」 速生は本とカードを職員の前のカウンターにドサッと置いて、走って図書館を出た。 「ーーー大丈夫ですかっ!?」 速生が急いで駆け寄ると、 老女は「うぅぅ……」と辛そうな声を出しながら、横断歩道の前の地面に膝をついていた。 脚に力が入らなくなってしまったようで、腰を片手で庇っている。 その瞬間、老女の手から押し車が放された。 寸前まで体重が掛かっていたその車体は、突然前のめりに崩れ落ちた老女の勢いで思い切り前に押し出され、傾斜のついた歩道から道路へと勢いよく飛び出していた。  「ーーーーー危ないっ!!」 すぐそこまで迫っていた二輪バイクが、突然目の前に現れた押し車を避けて勢い良く歩道へと突っ込む。 速生は咄嗟に、老女の身体に覆い被さった。 ーーキキキキィーーーーーッ!!! 対向車の急ブレーキ音が、辺りに響き渡ったーーーー。

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