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告白 2-3
ーーー…
美術部室に戻った夕人は、なぜか、どこか落ち着かず、部員たちの話し合う声もあまり頭に入って来ない。
「あの……相模くん、ごめんな?
せっかく図書室探してくれたのに良さそうな資料なかったんだろ?
そういえば玖賀くんは?さっき相模くんを探しにこっちまで来てたのにーー…」
部長が申し訳なさそうに夕人に尋ねる。夕人は、速生が市立図書館まで資料を探しに行ってくれてることを伝えた。
「へぇ……なんか、玖賀くんって、見かけによらず意外と優しいよな。
バスケ部員から”でかくて怖い”って話よく聞いてたから、そういうイメージが強かったんだけど……」
夕人は驚く。
「えっ?速生が?
でかいのは合ってるけど、全然優しいよ?
よく気がきくし、面白いし……あいつのことが怖いとか……全く想像つかないんだけど」
ーーーいや、それってやっぱり相模くんに対してだけなんじゃ………?
部員たちは無意識に速生からの過剰な優しさを受け続けている夕人に対して、それを指摘してはいけない雰囲気を感じ取って、黙った。
「……ごめん。俺、やっぱり気になるからちょっと図書館行ってきていいかな?」
ーーーこの胸騒ぎは何だろうーーー?
どうしても気になってしまい、夕人はスマホを制服のポケットに入れて足早に部室を出た。
「ーーー相模先輩!」
呼び止められ振り返ると、廊下には一年の矢代が立っていた。
「あの、俺も一緒に行っちゃダメですか?資料探すなら、人数多い方がいいかなって……玖賀さんだけに任せるよりーー…」
矢代の言葉に夕人は苦笑いして、首を横に振った。
「矢代くんは、一年の出展物仕上げないとだろ?
大丈夫だよ、俺一人で行く。
それに……速生はちゃんと、わかってくれてるから」
その言葉の端から、“速生は1番自分を理解してくれている”という意味を感じ取った矢代は、残念そうに、悔しそうにーー…「わかりました、気をつけて行ってくださいね」とだけ答えた。
校舎を出て、早足で市立図書館へと続く歩道を進む。
夕人は歩きながらスマホをポケットから出して時間を確認した。
ーーー速生、いくら何でも遅くないかーーー?
速生が学校を出てからすでに1時間近く経っている。いくら時間をかけて探してくれていたとしても、さすがにもうそろそろ帰ってこないとおかしい。
ーーー図書館まではこの歩道を一本道のはずだから、途中で絶対すれ違うはずだ……。
スマホから速生の携帯に電話をかける。
『プルルルル………ただいま電話に出られません……』
まだ図書館の中にいるんだろうか?
不審に思いさらに早足で進んだ、その時。
ーーーピーーポーーピーーポーー……
急ぐ夕人の真横を、救急車がサイレンを鳴らしながら通り過ぎた。
嫌な予感がして仕方ない。……どうしようもなく不安で、胸の奥がぎゅうっと痛む。
もう一度電話をかけるが、やはり速生は出ない。
ーーー速生?なんで出ないんだよ……?
市立図書館が見えてきた。
図書館の入り口には警察のパトカーが停まり、二輪バイクと、老人車と呼ばれる荷入れの押し車が歩道に無造作に倒れている。
ヘルメットを被ったバイクの運転手らしき人物が、警察官と話をしているのが見えた。
ーーーーーー事故………?
辺りには人が集まっていた。ざわめく人混みをすり抜けて、夕人は急ぎ足で図書館の中へ入った。
館内を見渡す。事故の見物に館内の人々は外へ出てしまっていたようで、夕人の焦る足音だけが響いた。
その時、不安そうな顔をした受付カウンターの館員と目が合った。
「あのーー……すみません、ここに、市立第一高校の制服の、背の高い男子、来なかったですか……?」
女性館員に尋ねると、驚いた表情で、彼女は慌てて貸出カードを差し出した。
「この人のことですよね!?さっき、そこ、目の前で事故に遭ってーーー……救急車で運ばれて行ったんです……っ!」
「ーーーーー……え………っ…?」
事故……?救急車………?
何だ、それ………?
頭が真っ白になる。
震える手で、速生の貸出カードを受け取った。
「この本を、借りられたんですけどーー…外を見て突然飛び出して行って、その後事故が遭ったようで、この本も、そのままーー………あっ!ちょっと…!」
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