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告白 2-6

ーーーえ…………? ーーーいま、速生…………なんて………… 後ろから抱きしめられた身体は、戸惑いと驚きのあまり動かすことが出来ず……。 「なぁ、なんで? 俺、言うつもりなかったのに。 夕人、なんで、そんなに俺のこと、心配してくれんの…?…………なぁ」 か細い身体を、後ろから抱きしめる腕に力を込める。 もう、我慢できなかった。 夕人の……自分を心配し、長距離を一生懸命走り、息を切らす……ぼろぼろと、大粒の涙を流すその姿を見て、もう、限界だと思った。 ーーーもう、この気持ちを隠すことはできない。 ただ、伝えたかった。 とめどなく溢れて、張り裂けそうに苦しい、胸の中のーーー……この想いを。 「こっち、向いて………夕人」 速生は抱きしめた腕を緩めると、夕人の肩に手を回した。 「な………っいや、あ、あの…………」 二人は向き合った。 顔を真っ赤にした夕人の、潤んだ瞳、 濡れた睫毛を見つめて、頬の涙の粒を指で拭う。 状況がまるで飲み込めず,戸惑いの表情を浮かべたまま、おずおずと視線を上げる夕人。 「………………っ……」 「夕人、好きだーーー………」 真っ直ぐ、ふたりは見つめあった。 まるで時間が止まったような……何も聞こえなくなるほどの、沈黙。 愛しくて、仕方なくて。 大切な宝物に触れるように……頬に、手を添える。 速生は、ゆっくりと目を閉じた。 唇と唇が、触れそうになったーー…その瞬間だった。

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