85 / 113
告白 2-6
ーーーえ…………?
ーーーいま、速生…………なんて…………
後ろから抱きしめられた身体は、戸惑いと驚きのあまり動かすことが出来ず……。
「なぁ、なんで?
俺、言うつもりなかったのに。
夕人、なんで、そんなに俺のこと、心配してくれんの…?…………なぁ」
か細い身体を、後ろから抱きしめる腕に力を込める。
もう、我慢できなかった。
夕人の……自分を心配し、長距離を一生懸命走り、息を切らす……ぼろぼろと、大粒の涙を流すその姿を見て、もう、限界だと思った。
ーーーもう、この気持ちを隠すことはできない。
ただ、伝えたかった。
とめどなく溢れて、張り裂けそうに苦しい、胸の中のーーー……この想いを。
「こっち、向いて………夕人」
速生は抱きしめた腕を緩めると、夕人の肩に手を回した。
「な………っいや、あ、あの…………」
二人は向き合った。
顔を真っ赤にした夕人の、潤んだ瞳、
濡れた睫毛を見つめて、頬の涙の粒を指で拭う。
状況がまるで飲み込めず,戸惑いの表情を浮かべたまま、おずおずと視線を上げる夕人。
「………………っ……」
「夕人、好きだーーー………」
真っ直ぐ、ふたりは見つめあった。
まるで時間が止まったような……何も聞こえなくなるほどの、沈黙。
愛しくて、仕方なくて。
大切な宝物に触れるように……頬に、手を添える。
速生は、ゆっくりと目を閉じた。
唇と唇が、触れそうになったーー…その瞬間だった。
ともだちにシェアしよう!