93 / 113
交わされるきみへの想い 1-4
「ーーーー夕人のことが好きで、好きすぎてもうどうしたらいいかわかんねぇんだよ!」
突然の大声に、夕人はビクッと身体を震わせた。
速生は夕人が座り込むベッドに近づいた。床に膝をついて、顔を見上げる。
「なぁ、教えてくれよ……夕人。俺、もう、どうしたらいいかわかんないんだよ。
なんで、こんな………、自分でもわかんねぇけど。
一緒にこうやって、夕人の近くにいるだけで、もう、俺………今もずっと、
夕人に触れたくて。好きで、頭おかしくなりそうなんだ」
速生の瞳から涙が零れる。
こんなにも苦しそうに自分を見つめる速生を、今までに見たことがあっただろうかーー?
久しぶりに見た速生の泣き顔に、胸が締め付けられて痛くて、どうしようもなくて。
「なっ…泣くなよ、バカ……。
泣いたって、何も、変わんないだろ…………。
泣き虫速生……」
「…っ……きっ、昨日あれだけ、俺の前でボロ泣きしてた夕人に、グスッ、言われたくねぇし………」
「なっ…………!あ、あれは…!
それとこれとは話が別だろっ!」
「別じゃねぇし………じゃあ、夕人はなんであんなに泣いてたんだよ?
説明しろよ。できる?」
「〜〜〜〜〜〜っ………なんで、そんなこと言うんだよっ……」
こんなにも,意地悪く、自分を責め立てる速生の口ぶりは初めてで。
怒ってるようで、拗ねているようで……、無言で見つめられてどう返答すればいいか考えても,正解は見つからない。
「……………」
速生は真っ直ぐ、ただ黙って夕人を見つめて、答えるのを待っている。
「そんなの………っ、速生のことが、大切だからに決まってんだろ………大切で、それで……」
じっと見つめられて、こんな、まるで……心の中を透かされるようで。顔から火が出そうだ。
「……………それで?」
「怖かったんだ……速生が、いなくなったら、どうしようって………。
俺の前から、いなくなったら…そんなの、耐えられない………だって…」
速生は相槌も打たず、夕人の言葉を聞いている。
その沈黙が気まずくて、前を見られない。
恥ずかしくて、どうしようもなくて……もはや自分が何を言っているのかわからなくなるほど、動揺しながら続ける。
「ずっと一緒にいたくて…離れたくない、から……だから、俺………。」
自分の気持ちを、ちゃんと口にすることで、気付いた。
速生へのこの想いが、何なのかーーー…
「速生のこと、俺…………俺も…………っ」
その言葉を遮るように、速生は、立ち上がってベッドの上の夕人に手を伸ばした。
ーーーギシッ……
「!……はや………っ……」
シングルベッドの上。長い腕がのびてきて、ぎゅ……っと強く抱きしめられた。
夕人の身体は思わず硬直してしまい、されるがままに、ただ力強く、抱きしめられる。
速生の体温を感じた。
大きな肩に包まれたその時、どこか、知っている香りが漂う。
激しく高鳴る鼓動とは裏腹に、その心地よさに、頭の中は酔いしれてしまいそうで。
ともだちにシェアしよう!