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交わされるきみへの想い 1-5

「………なぁ。俺の胸の音、聞こえる?」 そう言って速生は、夕人の頭に手を添えてその耳に自分の胸を当てた。 ーーードクッドクッドクッドクッ… とても速く波打つ鼓動が聞こえる。 それを聞いて、こんなにも動揺してしまっているのは……自分だけじゃないんだ、と思う。 「もう、心臓バクバクで破裂しそう。夕人のせいだぞ。ーーー死んだら、責任取れよ?」 「な、……何言って……」 こっちだってそれどころじゃない、そう思いながら、速生の顔を見上げた。 すぐ傍の、自分の腕の中にいる上目遣いになった夕人を見て、速生は思わず問いかける。 「ーーーーーキス、していい?」 「なっ……!? だ、ダメ………ーーーーーー!」 ーーーチュッ 顎を掴み引き寄せられ、突然口付けられた。 目を閉じた速生の顔を、こんなに近くで見たことがない。 渇いた唇の感触に、驚きと、恥じらいでーー…頭の中が追いつかない。 「は……っ…」 「やばっ……しちゃった……。 ああ、俺、もう無理……。 夕人、マジで、めっちゃ好き……」 「ちょっ………と待っ!……」 また口づけ。唇を吸われて、んっ、と変な声が出てしまう。 ーーギシッ、ギシ…… 軋むベッド。壁際に背中が当たってしまいそうになるほどに、激しく唇を求められる。 「んっ……!ぅ………っ……ふっ…」 鼻と鼻がぶつかりそうで、何だか怖いと思う。 どうしたらいいか考えるも、自分は今一体何をしているのか、されているのか、わからなくなってくる。 「んっ……!は、はや………っ、んぅ……… ……やめ…っ………………んっ…」 夕人は速生の肩に手を押し当て抵抗しようとするが、すぐにまた強い力で引き寄せられる。 後頭部に手を回し、口づけをやめようとしない速生は、夕人の抵抗する声も、何も聞こえなくなるほどにただ、気持ちが(たかぶ)っていた。 二人の荒い息と、唇から漏れる音が、静かな部屋に響き渡る。 「はぁっ、速生、っ……バカ、ふざけんなっ」 「バカでいいよ。もう、何でもいいし……好きだ、大好きだ、夕人……」 「んんっ……」 何度も繰り返される、荒々しいキス。 上唇に速生の濡れた舌が絡み、頬にくちづけられ、また口元へ。ずっと続く知らない初めての感触に、首から上が火照って熱く、溶けてしまいそうなほどの熱情。 もう恥ずかしくて、こっちの方が死んでしまいそうだ、と思う。夕人は、抵抗をやめた。 「ゆう…と…………っはぁ…好き、だ…っ」 「んっ……!ーー…はや、みっ……んぅ、」 こんな気持ちは、こんなに誰かと触れ合うのは…何もかもが生まれて初めてだというのに、覚悟する時間すら与えてくれないのが、腹立たしくて、だけどその余裕の無さが、愛しくすら思えてくる。 ……………もう、多分、既にどうにかなってしまっている。

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