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交わされるきみへの想い 2-1

そしてーーーー 遂に、市立第一高校文化祭の日がやって来た。 三年にとって高校生活最後の文化祭イベントということもあり、1年・2年クラスの生徒たちがメインの主催側となり夕人と速生たち三年生は下級生クラスの出し物や、各文化部の出展物を見て回ることになっていた。 夕人が朝の準備を終えていつもの時間に家を出ようとすると、母がリビングからとても惜しそうな顔をして見送る。 「お母さんも文化祭、見に行きたかったわぁ……OBと、来賓者のみの招待なんですってね?」 「今年は平日開催だからね。誰でも来場参加okにしてたら収拾つかなくなるみたいだし、仕方ないよ」 数年前、来場した他校同士の生徒が喧嘩騒動を起こすというトラブルがあってから、招待客は極力内々にし、出来る限り当校の生徒たちをメインで楽しめる文化祭にしようという流れになっていた。 「まあ、スマホ利用okだし…写真とか動画とか色々撮ってくるよ。じゃあ、行ってきます」 ーーガチャ、 家を出て横を見ると、門の前に寄りかかって夕人を待つ、速生がいた。 「おはよ、夕人」 「ーーー………はよ」 あの速生の救急車騒動から1週間足らずーー…。 未だに二人はどこかよそよそしく、お決まりの登下校時にもなんとも言えない雰囲気が漂う。 いつもは登校前に自分の家の如く部屋まで入り夕人を起こしていた速生が、あの日からは自宅の前で待つようになり……夕人の母も“最近なにかあったの?”と不思議がるほど。 「……あのさ」「あの……」 バス停までの道のりのさなか、二人の声が被る。 「!……夕人、なに?」 「いや、先に話して」 「えっ?えっと……そのーー……」 速生はとても言いづらそうに、夕人の顔をチラッと見る。 「あのさ、やっぱり…怒ってる?」   「……?…え、な、何を?」 「いや、その………キス、したこと……」 「!」 ーーー今頃!? あれから何日経ってると思ってんだよ! 普通蒸し返すか!? 夕人はバス停に着く直前の歩道で立ち止まった。

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