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交わされるきみへの想い 2-4

校舎の中各部の教室ではいろんな催しが開かれていて、生徒たちの人だかりができていた。 家庭科部のハンドメイドマーケットや、コーラス部によるボイスレッスン体験、茶道部の着物カフェ……… はしゃぎ楽しそうに過ごす生徒たちの中、いろんな出し物を見物しながら、二人は一年のクラス通路にやってきた。 「わ、夕人!あれ見ろよ」 速生が指差した先にはーーー…一年普通科クラスの出し物の、“お化け屋敷”が。 教室の中は真っ黒いカーテンで仕切られており、中がどうなっているのか全くわからないようになっている。 「な、入ってみる?」 「えっ…!?い、いや、その、…正直、俺こういうの興味ないんだけど?」 ーーー今のこの状況で、こんなところに入ったらどうなるかーー…こいつに、速生に中で何をされるかわかったもんじゃない。 凄まじく身の危険を感じた夕人は、”そんな子供じみたもの興味ないし。”というスタンスでお化け屋敷を通り過ぎようとした。 「えっ……?夕人、まさかーーー…怖いのか?」 速生のその言葉に、夕人はぴたりと足を止めた。 「そっかぁ〜〜〜、やっぱり、夕人はお子ちゃまだな。こんなのが怖いなんて……ま、仕方ないか」 「ーーー誰が怖いって?」 夕人は振り返って速生を睨むと、お化け屋敷の入口へと引き返して歩く。 『ーーーえ!ちょ、ちょっと!王子来た!王子…相模先輩! 入ってくるよ!』   『うそっ!?やだっちょっとオバケ役だれ!?代わってよ!間近で王子見れるチャンスなんだけど!』 1年女子たちが、お化け屋敷の出口から隠れて、夕人と速生が入口へ入っていくのを見て騒ぐ。 『えーっ!相模王子入ってくるって!?どうしよう! あ!ちょっと、矢代くん!そのカツラ……!』 美術部1年、お化け屋敷の中で照明係をしていた矢代は、その女子たちの騒ぐ声を聞いた途端、貞子役の女子のカツラを奪い取り真っ暗な教室奥へと走った。 (相模先輩に密着するチャンス!!これだけ暗かったらまさか俺がオバケ役とはわからないだろうし……役得だよな!) ワクワクしながら、出口付近のホラー音が自動で鳴るようにセッティングしてある場所で、矢代は夕人を待ち構える。 「……ーーうわ、結構凝ってんなぁ〜…」 黒いカーテンで仕切られて遮光された教室内は、ひたすら闇が広がっていて、いつものクラスの教室の見る影もなく… 大きい段ボールで仕切られた狭い通路を、二人はゆっくり歩く。 どこかに置かれたスピーカーから、風の音や、ギギギ…という扉の音が絶え間なく流れていて、思った以上に本格的な雰囲気が醸し出されていた。 「っ…というか………狭すぎだろこのダンボール通路……ちょっと、設計ミス?」 大人ひとりがやっと通れる広さの仕切りの中を、ところどころに足元に置かれたロウソクのような3dミニライトの灯りを頼りに、前へ進む。 ーーぎゅっ! 「!」 誰かに手を握られた感触に夕人は驚いて立ち止まる。 後ろを振り返ると…… 「速生……お、お前なぁ〜〜〜〜」 「あはっ、バレた?」 後ろを歩いていた速生が、ちゃっかり手を握っている。 小声で“離せ!バカ!”と怒る夕人の肩に手を回すと、速生は、今度は朝とは反対の夕人の右耳に、ちゅっと口付けた。 「〜〜〜〜っ! ーーーーもう俺、出るっ!!」 夕人は速生の手を勢いよく振りほどき、猛ダッシュで出口へ向かった。 「あっ!夕人ごめん!待って!」 流石に調子乗りすぎた…と思い速生は追いかける。 天井から吊るされたコンニャク、不自然に設置された理科室の人体模型の間を頑張って通り抜けーー…… 狭い通路を走って出口に近づいた時、するとそこに…… 「う〜ら〜め〜し〜や〜〜〜」 ーーーーガシッ!! 「うわぁーーーっ!?」 ”バーン!”という効果音とともに、速生は後ろから何者かに抱きつかれその衝動に叫んで立ち止まった。 「………げっ!?く、玖賀さん!?相模先輩じゃない!」 「……え!オバケが喋った!? はっ!その声……一年の矢代くんか!?お前……もしかして…」 てめぇ〜〜さてはちゃっかり夕人に抱きつこうとしやがったなぁ?と詰め寄ると、暗闇の中矢代の頭に思い切りチョップをかます。 「悪霊退散っ!! ーーーーー夕人っ、待ってーー!」 矢代は頭を押さえて、クッソ〜、覚えてろよぉ…とその場に座り込んだ。

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