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交わされるきみへの想い 2-5
昼休憩を挟み、午後の部が始まる。
体育館では、着々と軽音部によるライブステージの準備が進められていた。
「な、夕人。軽音部の舞台ステージ、楽しみだな?美術部の作ったパネルもう飾られてるぜ、きっと」
軽音部のライブは16時スタートの予定で、文化祭のトリを務めることになる。
その華々しいステージに、夕人たち美術部が協力して製作したファブリックパネルが飾られるということは、とても誇らしいことだった。
その速生の美術部という言葉に、夕人はふと思い出したように、
「ーーあ、そうだ。俺、ちょっと今から美術部の作品展覧会の受付の様子見てくる。
部長、たぶんずっと一人で受付してくれてるから。そろそろ交代してやらないと…」
「俺も一緒に行こうか?
ーーーてか夕人ってば、相変わらず優しいな。そんなところも、大す……」
「そういう余計なこと言うなら、ついてこなくていいから。」
夕人は速生にキッ!と睨みをきかせて、
「しばらく一人で好きなとこまわってて。これ、命令な。ーーーいい?」
「あっ、はい……。
えぇ……でも、それってすごく寂しいんだけど……」
速生の悲しそうな声に、お前はでかい子供か!と思いながら、体育館前に設置された時計に目をやる。
「ーーーわかったよ!じゃあ…3時までには絶対体育館前に戻るから。それまでは、別行動。
いいな?もし見つからなかったり何かあった時は、電話するから」
そう言って夕人は美術部室の方へと駆けて行った。
(ちょっと、今日は夕人のこと、いろいろ困らせすぎたかな………)
速生は体育館前を1人で歩きながら、今朝からこれまでのやりとりを思い出し、少し反省をする。
自分の出すちょっかいに対し照れ隠しで怒る夕人の反応が、あまりにも初々しく、愛らしくて仕方なくて。
ダメだとわかっていてもつい、好きな子をからかういじめっ子のように続けてしまう。
(これでも、結構我慢してる方なんだけどな……)
だけど本当はもっと、近くで夕人の顔を見て、手を握ったり、柔らかい髪に触れたりーー…
頬、耳、首、唇ーー………
すべてにくちづけて、この腕の中で、まるで自分だけのもののように……どうにかしてしまいたい。
想いを伝えた次の日の、初めてキスをしたあの時の夕人を思い出す。
“ーーーーはやみっ………”
今でもはっきりと、思い出せる。
夕人の、抵抗しながらも、戸惑いながら少しずつ、受け入れるような。
嫌がる口ぶりのわりに、ちっとも、嫌そうではないーー…あの熱くて、甘い、溶けそうなほどに濃い時間。
(俺ーーー……やばいな。こんなところでこんなこと考えて、マジで変態じゃん…)
こんなことでは、このままでは嫌われてしまうかもーー…と、不安に駆られる。
(けど、触れたくて、仕方ないんだよーーー
…)
そう思いに耽っていた時だった。
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