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交わされるきみへの想い 2-8
「ーーーあっちょっと見て!美術部室,相模先輩が受付してる!」
「ーーーほんとだ!王子先輩!きゃあ〜っ!かっこいい!ねぇ!ちょっと握手してもらおう!」
夕人の姿に気づいた下級生の女子たちが、美術部室の受付にわらわらと集まってくる。
「美術部室の前!王子が握手会してるんだって!」
「え!マジ!?握手会!?レアすぎ!いこいこ!」
美術部室の前にズラリと女子たちの謎の行列が出来上がり,夕人は顔をあげて目を疑う。
「え、あ、あのーーー…」
「相模先輩!あの!一生の思い出にします!握手してください!」
普段ならば絶対に他人の手になど触れてたまるかというスタンスの夕人だが、
ーーーまあ、今日くらいはいいか……。
そう思い、
「じゃあ、握手したら展覧会観て帰ってね?」
微笑んで、後輩女子の手を優しく握った。
「きゃあ〜〜〜〜!超カッコいい!あっありがとうございます!!」
何人と握手を交わして美術部室へ誘導しただろうか。
まるで“客寄せパンダ“にでもなったような気分で、目の前に差し出された最後の1人の手を握ろうとして顔をあげたその時。
「ーーーーあっ………」
「やあ。俺とも握手してくれる?相模くん」
そこには、元美術部部長で、夕人が唯一心を許していた先輩、瀬戸和樹が立っていた。
にっこり笑って、右手を差し出している。
「……瀬戸さん、来られてたんですね。お久しぶりです」
夕人は瀬戸の差し出した右手をスルーしたまま、受付票とペンを差し出し「こちらに記入お願いします」と涼しい顔で伝える。
「………はは…。相模くん、変わってないみたいで安心したよ。
これ、書けばいいんだね」
瀬戸はそういって苦笑いすると、受付票にサラサラと名前を書き入れる。
「ーー…瀬戸さん、大学の方はどうですか?今は東京にいらっしゃるんですよね?」
瀬戸はあれからT芸大を現役で合格し、今では東京に住んで通学しているという話を聞いていた。
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