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第8話
次の日の朝、三笠は蒼空に近所にあるカフェでの朝食を提案した。
「カフェですか?」
「うん、どうかな。たまに、そこで朝食を摂ってから仕事に行ったりするんだよ。テイクアウトしていくこともあるけどね」
「カフェで朝食は食べたことないかもです」
「そうなの?じゃあ、どう?行ってみる?フードも美味しいよ」
優しく三笠が微笑むと、蒼空はコクリと頷いた。
「じゃ、行こうか!」
二人は歩いて十分ほどのカフェを訪れた。
そこはチェーン店ではなく落ち着いた雰囲気の個人店だが、明るい印象がある店舗だ。こじんまりとした店内であるものの、十分に落ち着ける。
「雰囲気、良さそうですね」
店内に入るなり、蒼空が呟いた。
「だろ?この雰囲気が好きなんだ」
その後に、コーヒーとホットドッグを購入して二人で食べる。
「あ、美味しい」
出会って初めて、蒼空が目を輝かせた。その様子に、三笠はつい見惚れてしまった。
「どうかしました?」
蒼空はキョトンとしている。
「あぁいや。何でもないよ」
「何か、いいですね。こういう時間も。俺には、こんな時間なかったから……」
そう言う蒼空を見て、三笠の胸は少し辛くなった。目の前の男は、これまでどんな人生を歩んできたのか……。
「これからは、たまに一緒に来よう。誰かと一緒に食べる方が楽しいよ、きっと」
今後、蒼空のことを色々と知っていきたいと思った。だから、一緒の時間を過ごしたいとも思う。
「そうですね……。でも、できるだけ早く仕事と部屋をみつけますね。三笠さんに、あまり迷惑かけられませんから……」
「言わなかったっけ?いつまでいてもらっても構わないって」
「でも……」
「急ぐ必要はないからさ。ね?」
「はい……」
蒼空は肩を竦めた。
その後二人は食事を済ませ、一旦蒼空を部屋に送り届けた。
「悪いけど、俺は仕事に行かなくちゃならない。君はここで好きに過ごしていいよ」
「出会ってあまり経ってないのに……僕のこと、置いておいて平気なんですか?」
「あはは。取り調べではちょっと勢いで疑って、失礼なことをしたけれど……刑事だし、人を見る目はあるつもりだよ。だから、君は信じられる人だと思ってる」
真っ直ぐに蒼空の目を見つめると、彼の頬にはほのかに朱が差した。
「……分かりました。じゃあ、大人しくしています」
「うん。帰りは分からないけど、多分遅くなると思う。何かあったら、連絡して」
昨夜のうちに、蒼空とは携帯電話の番号を交換していたのだ。
「はい。行ってらっしゃい」
そう言われて、三笠は悪くない気がした。誰かに送り出してもらえる日が来るとは、思わなかったから。「うん」と笑顔を残して、三笠は仕事へと向かった。
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