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第10話
次の日、見ようと思っていたホラー映画が午後から上映されたので、二人で鑑賞してきた。
「めちゃくちゃ怖かったね。俺の今まで見たホラー映画の中で一番怖かったかも」
「俺も一番怖かったです。今でも震えてしまいますね」
「うん。俺もまだ脚がガクガクだよ。途中でゾンビが女の人襲うところなんか、声上げそうになっちゃったよ」
「それ俺もです」
映画が終わった後に、二人で笑い合いながら歩いた。
街を歩いていると、視界にふと神社が目に入った。
「あれ、こんなところに神社なんてあったっけ」
「あ、そうですね。僕もこの道は通ったことありますけど、気付きませんでした」
「ホント?珍しいよな。街中に神社あるなんて」
人々が多く行き交う繁華街の一角に建つ神社。見てみると、結構な年月が経っていそうな佇まいをしている。長い間、街を行く人たちを見守ってきたのだろうか。
「ねぇ、神社に行ってみない?」
「え?」
「君のこれからが上手くいくように、拝んでいこうこれからが上手くいくように、お参りしよう」
「僕の、ですか?」
「うん!」
笑顔で三笠が頷くと、蒼空もコクリと頷いた。
その後、神社での作法に則り二人でお参りを済ませる。
「蒼空くんは何をお願いしたの?」
「そうですね……何とか、生きていければと願いました」
肉親を亡くし、一人になった蒼空。生きていくだけで精一杯なのだろう。
「大丈夫。これからはきっと運も上向くよ」
根拠があるわけではないが、蒼空と関わってみてそう思えた。
「あ、ありがとうございます。何か、そう言ってもらえるとそんな気がしてきますね」
「これから頑張って。俺も応援してるから」
「はい!」
蒼空は笑顔で頷いた。
「あ、そうだ。ちょっと待ってて」
「え?あ、はい」
キョトンとしている蒼空を置いて、三笠はお守り売り場へと向かった。お守り売り場には、安産祈願や交通安全など様々なお守りが並んでいる。迷った末に三笠が選んだのは、オーソドックスなお守りだった。
「これください」
紺色のお守りを二つ、受け付けの巫女に差し出す。蒼空の分と自分用だ。何となく、自分でも持ちたいと思ったのだ。
「別々にお包みしますか?」
応対してくれている巫女が気を利かせてくれたらしい。
「あ、はい。お願いします」
二つのお守りを受け取り、蒼空のもとに戻る。とはいえ、彼はお守り売り場の近くまで来て待っていた。
「ごめん、お待たせ」
「いえ。大丈夫です」
「はい、これ」
「え、これ何ですか?」
蒼空は手渡された袋を見て目を瞬かせた。
「お守りだよ。君を守ってもらえるように。俺も同じの買っちゃったけどね」
三笠の言葉に、蒼空は少し頬を染めた。
「俺なんかのために、こんな……」
「そんなこと言わないで。深い意味があるわけじゃないからさ。出会った記念に、受け取ってくれるかな」
三笠が優しく微笑むと、蒼空はまた目を瞬かせ頭を深く下げる。
「あ、ありがとうございます」
頭を上げた蒼空は、早速自分の持っていたトートバッグにお守りを付けた。
「嬉しいな。俺も仕事用のバッグに付けるよ」
そう言うと、蒼空は頷いた。彼もどこか嬉しそうだ。
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