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第11話

 一か月後、蒼空とはすっかり打ち解けて兄弟のように気を許せる相手となった。仕事も無事見つかったと言う彼は家を出て行くと言ったが、三笠はなぜか『このままいてくれ』と引き留めた。だから、蒼空は未だに三笠の家で生活をして仕事にも通っている。  三笠も、毎日が楽しいような気がした。以前のように、ただ何となく生きているという感覚は抜けてきたようだ。  そんなある日の午前中、三笠は署で雑務を終えてから事件の捜査に出かけるところだった。署の一階を歩いていると、入口から見知った顔が入ってくるのに気付いてしまった。 『あ……』  とても嫌な予感がする。心拍数が異様に跳ね上がり、胸がざわついて仕方ない。 『何で、アイツが……』  地球上で、最も会いたくなかった相手だった。忘れたくても、忘れられない相手。 「あれ、豊じゃないか。久しぶりだなぁ」  三笠の存在に気付いた相手が、わざわざ声をかけてきた。正直、返事すらしたくない。けれど、無視するわけにはいかないだろう。かつての先輩だから。 「……久しぶりです……」 「ちょっと用があって来たんだ。元気だった?」 「まぁ、取り敢えず」 「後で、ちょっと話せないか?お前のとこ行くからさ」 「俺は話ことなんてないです」  三笠は憮然とした表情できっぱりと断った。 「つれないなぁ、相変わらず。あの時は、俺も悪かったと思ってるからさ。もう何年も経ってるんだし、水に流してくれよ」  男は軽い調子で肩を叩いてきた。それだけでも嫌悪感が湧いてくる。この人にだけは触れられたくない。 「できませんね」  いつまで引き摺ってるんだと自分でも思う。この人には、もう関わり合いになりたくないのだ。 「すみません。急ぐんで」  そう言い残して、三笠はその場を足早に立ち去った。「おい!」という男の声が聞こえた気がしたが、構わない。

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