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第27話

 その後、須藤は留置場に入れられた。そして、山之内にはさらに罪が加えられた。 須藤の取り調べの後、別室で事情を聞かれていた蒼空とやっと会うことができた。 蒼空のいる取調室に三笠は訪れた。 「大丈夫?」 「はい、平気です。優しい刑事さんでしたし」  表情もさほど暗くなく、三笠は安心した。 「そっか、良かった……。アイツは、ブタ箱に入れられたよ」 「あ、ありがとうございました。助けに来てくれて……」  俯きながら蒼空が呟いた。はっきりとは表情が窺い知れないが、どうやら耳まで真っ赤にしているようだ。三笠はその意味がさっぱり分からなかった。 「蒼空くんはもう帰っても大丈夫だよ。俺はまだ仕事があるけど」 「はい。分かりました」  二人で取り調べ室を出て、廊下を歩く 「じゃあ俺、御飯作って待ってますね」  そう言った蒼空の表情は晴れやかだったので、三笠はホッとした。 「うん!なるべく早く帰るから」  なんだか、この会話はまるで夫婦の様な気がして恥ずかしくなる。でも、悪い気がしない。  三笠は笑顔を向けて、「それじゃ」と言い警察署から出て行く蒼空を見送った。  その夜は事件があったため、夕食をまだ食べれていない。須藤の取り調べをしていたため、帰宅時間も深夜一時を超えていた。 帰宅すると、蒼空がまだ起きて待ってくれていた。 「ごめん、遅くなって。まだ起きてたんだね」 「アイツのことが、気になったので……」 「そっか。そうだよな。……全て話してくれたよ」  須藤が話した内容は酷な内容で、蒼空に聞かせて良いものか一瞬迷う。けれど、蒼空は事件の当事者なので知る権利があるだろう。話し辛いが、伝えるしかない。 「アイツが話した内容、聞く気持ちはある?」 「はい、大丈夫です。覚悟はできています」 「そうか……分かった。君のお母さんが再婚した山之内義明は、暴力団・龍星会の構成員だった」  そう伝えると、蒼空は一瞬目を見開いた後に肩を落とし「やっぱり、そうでしたか」と呟いた。 共に暮らしていた時から、蒼空は山之内の行動に怪しさを感じていたものの、まさか暴力団員だったとは思わなかったそうだ。 「山之内は、君が俺にヤツがお母さんを殺害した件を話したことを、恨んでいたみたいだ。それで、君を排除しようとしていた」 「そうだったんですね……」  義父に対して様々な思いがあるのだろう。単なる憎しみなどでは片付けられないものが、蒼空の中にあるような気がする。 「あと、俺が山之内を逮捕しただろう?だから、彼は俺のことも消そうとして、部下であるアイツにやらせたんだ。アイツが君に近付いたのも、今日のためだったらしい」  事実を告げると、当然ながら蒼空は酷く落胆した。  「騙されちゃったんですね、俺……」  蒼空の頬を涙が伝う。それを見た三笠は、抑えることができなくなった。次の瞬間、蒼空は三笠の腕に包まれていた。 「み、三笠さん……」  蒼空は大いに戸惑ったようだったが、三笠は構わずに力強く彼を抱きしめた。 「ごめん……怖い思いさせて……」 「いえ……俺が迂闊だったんです。誤らないでください」 「一緒に住んでるのに……君を守れなかったから……」 「助けてくれたじゃないですか……ありがとうございます。相手も、三笠さんがあんなに強いなんて思わなかったかもしれませんね」 「まぁね。こんな時のために、鍛えておいて良かったよ」  言い終わると、グゥと三笠の腹が鳴った。 「あ……ごめん……」 「ご飯、まだでしたもんね。食べましょうか」 「う、うん……」  蒼空は冷めてしまった料理を温め直してくれた。 長い一日だったが、真夜中に食べる蒼空の料理は格別に美味い。本格的に学んだら、その道でも花が開くかもしれない。 『いつまでも、蒼空くんの料理を食べていたい……』 三笠はそんな風に思った。そんなことは、叶わないかもしれないけれど。

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