28 / 63

第28話

 食後に、蒼空が落ち着かない様子で切り出した。 「三笠さん、話があるんですけど」 「え?何?」  改まった様子の蒼空に、三笠は少し緊張しながらも意識を向けた。 「俺、三笠さんのことが好きみたいです」 「……え?つ、つまり……」 「そういう意味で、好きです……」  そう言うと、蒼空は俯いてしまった。きっと、一世一代の告白だったのだろう。 「前から、三笠さんのことはいいなと思ってました。昨日あんな目に遭って、頭に浮かんだのは三笠さんの顔だったんです。助けに来てくれて、とても嬉しかった」 「蒼空くん……」 「警察の人だから、何か事件が起きたら駆け付けるのは当然だと分かってます。俺じゃなくても……。でも、俺には救世主みたいに見えたんです」 「きゅ、救世主?」  三笠が目を丸くすると、蒼空は照れ臭そうに頷いた。 「三笠さんは、前にも俺を救ってくれましたから」  蒼空の目から、真摯な気持ちが伝わってくる。 「こんな俺でも、まだ好きでいてくれるなら、付き合ってください」 「え、本当に?」  思いがけない告白に、三笠は戸惑ってしまった。 「はい」  蒼空は顔を盛大に赤くして頷く。そんな彼の反応が可愛くて仕方ない。 「嬉しい……こんなに嬉しいこと、他にないよ……」  三笠は食卓から席を立ち、蒼空の後ろに回った。そして、後ろから蒼空を抱きしめた。 「み、三笠さん……」  蒼空がピクリと反応したのが分かった。 「愛してる……。君と、ずっと一緒にいたい」  三笠の腕に、蒼空は手をかけた。 「お、俺も年をとっていきたいです」  蒼空が後ろを振り返ったので、三笠はキスをした。 一度目は軽いものだったが、再度唇を重ねる。二度目は蒼空も立ち上がり、濃厚に求め合った。 「ん……俺、溶けちゃいそう……」 「いいよ……溶ける君が見たい」  そう囁くと、三笠は蒼空の頭に両手を添えて口付けを深める。開いた口の少しの隙間から舌をねじ込ませ、蒼空のそれを見つけ絡ませた。 「んっ……ふっ……」  蒼空の息遣いが荒くなっているのが分かる。  しばらく貪り合っていると、目をトロンとさせる蒼空と目が合った。それを機に、二人はどちらからともなく唇を離した。 「前にさ、君が酔って帰ってきた時、俺にキスしたの覚えてる?」  それを聞いた蒼空は、大いに目を見開いた。 「え、え?そうなんですか?」 「うん。ほら、須藤と飲みに行ったとかで、かなりぐでんぐでんになって帰ってきただろ」 「はい。飲みに行ったのは覚えてますけど、その後のこと記憶になくて……」 「だから、俺も言わなかったんだ」  蒼空は“しまった”というような顔を見せた。 「すみません……俺、なんてこと……」 「謝んないでよ。あの時、俺嬉しかったんだ。もしかしたら、君の本心なんじゃないかって勝手に思ったり、ね」  そんなわけはないだろうけど、そんな風に思いたかったのだ。 「三笠さん……」  三笠は改めて蒼空を抱きしめた。宝物を扱うように。 「ねぇ、俺もう耐えらんないわ。君が欲しい」 「俺も、三笠さんに抱いて欲しい」  そんなことを言われ、三笠は蒼空の顔を覗き見た。 「いいの?歯止めきかなくなるかもよ?」 「はい。三笠さんなら大丈夫です。三笠さんにしか、触れられたくありません」  三笠はますます抑えていたものが溢れそうになる。 「嬉しい。愛してるよ」  唇を重ね合い、お互いを貪り合った。そして蒼空の服の中に手を差し込み、 背中を弄る。  蒼空の背中はスベスベで触り心地が良い。高い体温が、彼の昂揚の度合いを示しているだろう。 「なぁ……そろそろさ、ベッド行こう?」  耳元で囁くと、蒼空はピクリと反応を示した。

ともだちにシェアしよう!