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第29話
「え?ベッド?」
「うん。俺の部屋の」
三笠が提案すると、蒼空は一瞬だけ逡巡してから「はい」と言って頷いた。
「あれ?ここ…… 痣どうしたの?」
三笠は、蒼空の腰に傷があることに気付いた。それだけでなく、斜めに傷まである。どうやら古い傷のようだ。
つい聞いてしまった。以前に体を重ねた時は勢いもあったし、彼の痣や傷に気付かなかったのだ。聞いて良かったものだろうかと、三笠は聞いてから不安になった。
蒼空は三笠の質問に少し戸惑ったようだったが、一呼吸を置いてから口を開いた。
「それは、父親につけられたものです。義父の、山之内に……」
「え?どういうこと?」
あの山之内が、蒼空を虐待していたとでもいうのだろうか。嫌な予感がする。
「俺……母親が再婚してしばらくしてから、山之内に性的虐待を受けるようになったんです」
「まさか……」
三笠は恐ろしくなり、聞いたのは失敗だったと思った。暴力団の幹部であり、蒼空の母親を殺した山之内は、そんなことまでしていたのか。
「ごめん、こんなこと聞いて……思い出させちゃったね」
申し訳なくて、三笠は蒼空の顔をまともに見れなくなった。
「いいんです。あなたには、ちゃんと打ち明けなきゃと思ってたんです。俺に何があったのか、聞いてくれますか?」
「うん。蒼空くんが嫌でなければ」
三笠の言葉に、蒼空は訥々と自身の辛い過去を話し始めた。
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