30 / 63

第30話

 蒼空が中学生になった春のある日、彼には新しい父親ができた。少し強面なところもあるが、山之内は、母親にも蒼空にも優しかった。確かに蒼空の父親になろうとしてくれていた。しかし、それも最初のうちだけだった。  半年後の夏の終わり頃から、山之内の様子に異変が見られるようになったのだ。 山之内は、蒼空の母親に手を上げるようになった。 それは徐々にエスカレートしていき、日常的に山之内の怒鳴り声や大きな物音が聞こえるようになる。 アパート住まいだから、きっと隣の世帯などにも聞こえてしまっているだろう。  なぜこんなことをするのか、蒼空には分からなかった。 母親を守りたい蒼空は、山之内を止めようとした。 「止めてくれ!何でこんなことを……」  大の大人に、力で敵うわけがない。蒼空は山之内に払い除けられ、吹っ飛んだ。 「いって……」  壁に叩きつけられた蒼空の唇には血が滲んでいた。 「何だよ。お前まで歯向かうのか?」  氷のように冷たい目で自分を見下ろす山之内に、蒼空は背筋が凍るような気がした。 『この人は……やっぱり父親じゃない』  そう思うと、涙が出た。戸籍上は父親になったけれど、やはり自分の父親ではないことが認識されたような気がする。 「お前は俺の言うこと聞いてりゃいいんだよ。黙って引っ込んでろ」  山之内は蒼空を足蹴にした。 『母さんさんは、何でこんな男と再婚したんだ……』そう思うと自然と涙が出る。これ以上歯向かったら、自分がやられてしまう。  母親を助けたいが、どうにもできない自分が悔しい。  その後、山之内は蒼空にも暴力を振るうようになった。 なるべく山之内に会わないようにしたが、母親のことも気になった。  気に食わないことがあれば平手が飛んでくるし、蹴られることも日常的だ。  母親に、山之内と別れろと何度も言った。しかし、母親は「あの人には良い面があるのよ」と言って憚らない。 母親は完全に、山之内に支配されてしまっている。  事態は、さらに深刻になっていった。 「おい。しゃぶれ」  ある日、山之内は母親を外出させ、その隙に蒼空を服從させた。  立ったままズボンと下着をおろすと、その前に蒼空を膝まづかせる。  義父の局部を目の前にして、蒼空は顔を背けた。 すると、山之内の手で顔を正面に戻す。 「ホラ、さっさとしろ」  苛ついた様子で、山之内は蒼空の口に当て中へとねじ込んできた。 「んっ……うぐっ……」  初めてブチ込まれたそれに、蒼空は抵抗感に加えて息苦しさを感じた。 喉の最奥まで突き入れられ、えづきそうになる。けれど、口内を圧迫されているためそれもできない。 山之内は容赦なく腰を動かし始める。 『苦しい……嫌だ……!誰か助けて』  蒼空がそう叫んでも、叶うわけがなかった。  逃れようと思っても、頭を手でホールドされて無理だ。 「しっかりとしゃぶれよ。溜まってんだよ俺」  目線を上に向けると、山之内が冷酷さと熱を帯びた目で見下ろしてきた。  自身の意思とは裏腹に、蒼空は黙々とそれをしゃぶり続ける。まるで感情のない人形かロボットのように。 蒼空の口内で硬さを増した山之内の中心は、精をはき出した。

ともだちにシェアしよう!