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第47話
ある初夏の夜、「廃材が燃えている」との通報が入った。場所は署から二キロ程度の場所にある廃材置き場だった。
三笠たちが現場に行ってみると既に消防による消火は済んでおり、黒こげになった木材などが残されている。範囲は広くないが、民家などが周りになくて良かったと思う。
「放火……ですかね……」
思案していた蒼空が呟く
「そうだな……火の元になりそうなものはなさそうだし……」
この辺には防犯カメラがないため、捜査には時間を要しそうだ。
「辛抱強く捜査していくしかないな」
「そうですね」
捜査を担当する三笠と蒼空は、共に長期戦を覚悟していた。
その後一週間以内に、半径ニキロ以内で二件もボヤ騒ぎが起きた。
管轄内でこんな立て続けに不審火が起きるのは稀だ。
「何か、難しい案件かもしれませんね」
蒼空が溜め息を吐く。
「うん……俺も三件続けてってのは初めてだよ」
三笠は頭を抱える。
「もしかしたら、同一犯かもしれませんね」
「その線も含めて捜査しよう」
「はい」
捜査を進めていくと、二つ目のボヤ当時の付近が映る防犯カメラが見つかった。
防犯カメラには、赤い火の手が上がる様子と、若そうな男が走り去っていく場面が残っていた。
「こいつがやったんでしょうか。防犯カメラに気付かなかったんですかね」
犯行を計画するなら、防犯カメラの有無くらいは把握しておくものではないのだろうか。三笠も疑問に感じた。
「うん。怪しいよな……。身元を調べてみるか」
三笠の提案に、蒼空は素直に頷いた。
「そうですね」
現場近辺で聞き込みを始めるが、手がかりをなかなか得ることができない。
そんな中、事件のあった日の同じ時間帯に、不審な男を見かけたという人物が現れた。
「あぁ。あの日は集まりがあって出掛けたんだが、その帰りに走っていく男を見たんだよ。暗かったけど、黒い帽子を被っていたし違いないな」
「そうですか。その直後に、火の手が上がったと?」
目撃者である高齢男性に、 三笠がメモを片手に尋ねた。
「そうだ。びっくりしたよ。慌てて見に行ったら、そこのマンションのバイクが燃えてたんだ。あの男が怪しかった」
「分かりました。ありがとうございました」
三笠と蒼空は頭を下げてその場から立ち去った。
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