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第48話

 三日後、ある一人の男が重要参考人として浮かび上がった。三笠としてはもっと早く特定したかったが、上手くいかなかったのだ。  重要参考人は二十三歳の男で、コンビニでバイトをしているらしい。  身柄を確保するため、三笠のチームは皆で男の住むアパートの前で待ち構えていた。時間は、男がバイトから帰ってくる早朝の五時だ。  バイト帰りの男を狙い、確保する手筈になっている。  こうした時には緊張するもので、ふと横を見ると蒼空も緊張しているようだ。 「大丈夫だよ。落ち着いて」  そらは蒼空に向けた言葉だったが、自分自身に言い聞かせる意味もあった。 「はい」  蒼空は表情をより引き締めて頷いた。  するとその時、待っていた男が姿を現した。  三笠たちはアパートの塀に隠れていたが、男はそれに気付くともと来た方向に逃げていく。 しかしそれは、三笠らの想定内だ。逃げられたら、足の速い蒼空が真っ先に追いかけることになっていた。  蒼空は男が逃げたのを合図に駆け出した。男には追い着いたが、抵抗され暴れる相手と格闘することになる。そして三笠らが追い着こうという時に、男が蒼空にぶつかった次の瞬間、ドサっと蒼空が倒れた。 「川上!!」  チームが皆駆け寄り、三笠が蒼空を抱き起こした。そうしてる間に追っている男が逃げていくので、他のメンバーたちは男を追いかけた。 「おいっ!しっかりしろ!!」  思わず、普段は使わないような言葉遣いになる。蒼空の腹部から、多量の血が出ていたからだ。近くには、血が付いた刃渡り十センチ程度のナイフが転がっていた。 「三笠……さん……」  蒼空が薄っすらと目を開けた。しかし表情は苦痛に歪んでいる。 「い、痛い……」 「今救急車呼ぶから、耐えてくれよ」  三笠の言葉に、蒼空は弱くコクリと頷いた。  救急車を待つ僅かな間に、雪田から男を確保したと連絡があった。 蒼空を刺した後、追い掛けた佐藤に取り押さえられたのだという。  その後、三笠は蒼空に付き添い救急車に乗った。出血が多く心配だ。  病院で治療を受けた蒼空は、入院することになった。 「ごめんなさい……迷惑かけて……」 「大丈夫だよ。佐藤さんが捕まえてくれたし。気にしないで」 「まさか……ナイフを持っているとな思いませんでした……」  蒼空は心底悔しそうだ。 「まさかのことが起こるもんだ。常に用心しておいた方がいいな」 「はい。気を付けます」 「君が助かって良かったよ。本当に……びっくりした」 「三笠さんを置いて、早く死ねませんね」  蒼空が手を伸ばし三笠の方に近付けてきた。 「当たり前だ……」  三笠が蒼空の手を取ると、彼は弱く微笑んだ。 「早く良くなって……」 「はい……」  三笠は蒼空の手の甲に唇を落とした。  その後、三笠は署に戻った。蒼空の傍にいたかったが、仕方ない。

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