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第61話
『このところ肌寒いな......』
三笠がそう感じ始めた頃、そろそろ蒼空の誕生日が近づいてきたことを思い出した。このところは仕事が忙しく頭の奥深くに仕舞い込まれていたが、ふとデスクの卓上カレンダーを見て思い出したのだ。
例年はお互いの誕生日は一緒に食事をしたりはしていたが、特段にサプライズをしたりはしたことがなかったかもしれない。今年こそは何か特別なことをしたいと思うのだが......。
『何か良いアイデアないかな......』
これまで“恋人”にサプライズを仕掛けたことがない三笠は、悩んでしまう。ネットで調べてみようかと思ったが、ちょうどそこに同僚の佐藤が戻ってきた。
「佐藤さん、ちょっと相談があるんですけど......」
「ん?何だ?」
「ここではちょっと……」
三笠は佐藤を連れて休憩室に移動した。
少しの恥ずかしさを抑えて口を開く。
「今度、川上の誕生日があるんです。何か、いつもと違う祝い方とかないですかね」
「これまではどうしてたんだ?」
「そうですね……飯食いに行ったりとかはしてましたけど……」
プレゼントも贈り合ったりはしていたが、サプライズ的なものはなかった。だから、もう少し新鮮味のある誕生日にしたかったのだ。
「じゃあ、サプライズすれば良いんじゃないか?」
「サプライズ……例えば?」
「そうだなぁ。大げさじゃなくても、例えば内緒で高い店予約しておくのも良いかもな。後は、相手が喜びそうなプレゼントを陰で用意しておくとかな」
「なるほど……。そんなシンプルなことで良かったんですね」
「あぁ。後は店にケーキを注文しておくのも良いんじゃないか?。誕生日だからって言ってさ」
「そんなことできるんですか?」
「まぁな。俺もやったことがあるんだ」
「へぇ……分かりました!計画してみますね」
「おぉ!頑張れよ!」
佐藤はバシっと力強く三笠の肩を叩いた。少し痛かったが、佐藤からのエールの様な気がする。
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