6 / 82

第5話

☆ 中学1年で出会った蓮ちゃんとは、 二学期の席替えで班が同じになったことがきっかけで 仲良くなった。 もともとどちらかといえば人見知りなオレは、 自分からはあまり人には話しかけない。 そんな中、 面倒見のいいリーダー気質の蓮ちゃんが オレによく話しかけてくれて、 昼休みは一緒に遊んで、気づけば勉強も教わる中になる。 部活も違ったのに、帰り道はいつも一緒に帰った。 そうして中学2年。 蓮ちゃんが初めて彼女を作ったことで、 オレの世界はがらりと変わった。 あの容姿であの成績で、 容姿端麗をカタチにしたような蓮ちゃんは当然、 人気者で、モテることもよく知っていた。 けれども当の蓮ちゃんは そんなことにはあまり興味がないって感じだったし、 蓮ちゃんの人気ぶりは オレにとってはうらやましいというよりも、 まるで自分ゴトのように 誇らしいというような感覚だった。 そうして、 そんな蓮ちゃんが 女の子と付き合うと聞いたとき、 もちろん、蓮ちゃんから直接、聞かされたとき、 当時のオレは呼吸を忘れるくらいの衝撃を受けた。 モテモテだったことを知っていたのに なぜだろう・・・ 好きな子がいるんなんて知らなかったし、 蓮ちゃんは誰とも付き合わないような・・・ 気がしていた。 今思うとそれはきっと、 そうであって欲しいと願うオレの願望だったんだろう。 ぎこちなく、 なんとか絞り出した声でおめでとうと言いながらも、 オレは明らかにショックを受けていた。 蓮ちゃんの幸せを一緒に喜べない自分に驚いて、 ショックを受けてる自分にも、ショックを受けた。 それから放課後、 サッカーボールを追いかける蓮ちゃんの部活が終わるのを待って、 一緒に帰る相手はオレじゃなくなる。 その子と一緒に下校する二人をチラリと見ながら、 なぜだか自分がとっても虚しくて、 独りぼっちなんだって気持ちになった。 週末に映画を一緒に見に行っていた相手はオレだったのに、 その相手もオレではなくなった。 確かにオレたちは付き合ってたわけじゃない。 友達だ。 友達だから、 週末には一緒に映画に行ったり カラオケしたりしてたんだ。 そんなことわかってる。 もちろんオレだってそう思ってたし。 親友をとっれてしまったような 喪失感も少なからずあったと思う。 でもオレの場合、 そうじゃなかった。 そんな生半可なものじゃなかった。

ともだちにシェアしよう!